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Re: 戦国の世に生きる(参照300突破! 返信100突破!!) ( No.113 )
日時: 2010/11/14 20:35
名前: 鏖 ◆TeAoSh7Hf6 (ID: BcdVt4VG)

第参拾壱話「父の影」

「はぁ、はぁ……」
ただ馬上で揺られるだけでも苦しい。視界が暗くなっていく。
「(───死ぬかな)」
出血多量で死ぬなんて情けない、と思いつつ馬上で身体を揺らす。
「(───私が死んでも、政義たちが上手くやってくれる)」
いつ死んでも安心できる仲間に恵まれて、私は幸せ者だった。

視界が、完全に真っ暗になった───。


「れい……美麗……」
「んっ……?」
目の前に、存在するはずのない父上の姿がある。
こりゃ死んだな、と確信したが、とりあえず、跪く。
「くくっ、美麗、面を上げよ」
「はっ」
父上の命令通り、顔を上げる。
「───信長の娘よ、よくぞここまで育った」
「恐悦に存じます」
信じられない。まさか父上と会話することができるなんて。

「美麗よ、よくやった。美麗が男であれば、世も惜しまずお前を認めたろうに」
「……」
そう、私はどれだけ努力しても所詮は女。誰より強くても女。軽視される存在。
「くくっ、それは美麗に失礼か。よくぞ努力した。
 そして、よく信長を超えた」
「そんな、私はまだまだ……」
私の反論も最後まで聞いてもらえず、父上は言葉を紡ぐ。
「人材にも恵まれている」
伊達政宗の息子、真田幸村の息子、長宗我部元親の息子、毛利元就の息子。
そして、明智光秀の息子。
「あっ───」
「明智光秀の息子は、気にするでない」
「───はい」

「さぁ行け。お前は救われた」