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Re: 戦国の世に生きる ( No.26 )
日時: 2010/11/12 21:20
名前: 鏖 ◆TeAoSh7Hf6 (ID: BcdVt4VG)

第六話「恋の舞妓」

「まぁ、うちなんかでええの?」
あぁ、驚いてお茶噴き出しそうになったわぁ。
「ええ、貴方でなくては駄目」
彼女は京子。とても素晴らしい舞妓。
「美麗ちゃん、うちをあんま買い被らんでな?
 うち、そんな優秀じゃないで?」
美麗ちゃんが、同盟を結びたい今川軍との酒宴の席で、うちの舞を披露させたいって。

「いいえ。貴方以上の舞妓を私は知らない」
「あぁ、もう。嬉しいこと言ってくれるなぁ。
 しかも、そんな可愛い顔で言われたら断れへんわぁ」
まぁ、美麗ちゃんはいつも通り無表情なんやけどな。
元の顔が可愛いんよ。あぁ、もう! 憎らしいわぁ。
「じゃあ、今夜。宜しく」
そう言って去ってしまった。

「あぁ、美麗ちゃんが殿方であったなら……。
 うち、一目惚れしてまうわ……」
去り際もかっこいいのなんの。あんなかっこええ殿方、うちは知らん。
……あ、殿方じゃなかった。

「京子どす。今日はうちの舞を披露させていただきます」
そして、静かになった酒宴の席で音楽に合わせて舞う。
舞が終わると、五月蠅いほどの拍手でいっぱいになった。
「はぁ……」
この瞬間が一番うれしい。舞妓でよかった、って思える瞬間や。

「まぁ、織田軍の敵は我らと共通の敵……。
 ここは一度手を取り合いましょう」
と、今川義元の息子が告げた。