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第拾九話「手に入れた者、失ったもの」

「美麗、どうかしました?」
「いや……」
気味が悪いほど蒼白い顔がすぐ下にあって正直驚いた。
「ぼけーっとすんな。泰親が勝ったぞ」
「……」
そこには縛られたオクr……。毛利元知がいた。
「毛利元知……。知略に長けると聞く。その知略、我が軍で使う気はないか?」
「……第六天魔王の娘……。忌み子……。くっ、悪くはないか」
魔王の娘の実力、この目で測ろう。
「決まりだな」
そして、元知を縛っている縄を解く。

そして、安土城のある尾張へ帰る。戦の勝利を祝ってくれる民や侍女が盛大に迎え入れてくれる。

風呂に入って着替え、まずは幸直の部屋へ行く。
「……」
そこには、死んでいるのではないかと思うほど安らかな顔で眠る幸直がいた。
「……」
こんな顔もするのか、と思っていると、侍女が現れた。
「あの、美麗様……」
「どうした?」
「幸直様にお粥を……」
「そうか。下がってよい」
今夜は何もない。ずっと傍にいてやることもできる。
「ですが……!」
殿の手を借りるわけにはいかない、と思ったのか反論してくる。
「下がれ」
冷たく言い放たれた言葉に身体を震わせながら、粥を置いて退室した。

「ん……。むぅ……」
騒ぎに目を覚ました幸直。