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Re: ─ESP─『エスパー』キャストUP ( No.16 )
日時: 2010/11/20 19:18
名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)

09【忍び寄る暗雲】


水茂算介を討伐した翌日


天馬は会社に泊まり、携帯の音で目が覚めた。
「ったく・・・誰だよこんな朝早く・・・・」
天馬はベットから起き上がり、枕元に置いてあった携帯を見る。
着信は水崎七海だ。何でこんな朝早くに?
天馬は疑問を持ちながら、携帯を耳に近付ける。
『もしもし?』
『あっ!天馬おはよう。ちょっと聞きたいことあるんだけどさ!!』
『なんだよ・・・こっちは眠いから早く済まして・・・』
携帯の向こうから聞こえるように舌打ちが聞こえる。
七海は容姿は可愛いが、性格が若干悪い。

『駅伝大会、アンカー走ってくれない?』

『は!?』

天馬は七海の言葉を聞いて首を傾げる。
しかし、すぐに数日前のことを思い出した。
確か駅伝大会が近いから、生徒達だけで選抜された6人を選ばないといけない。
『ねぇ?天馬は足も早いし、体力もクラス一だから出てよ!!』
七海に催促されるが、天馬にとって今はそんなことどうでもいい。
クライム討伐が絶対に先決だ。
『俺は・・・いいよ・・・』
『え!?な、なんでよ!!天馬こういう行事好きじゃん!!』
『ごめん。ほかあたってくれ!!』

プッ!!

天馬は七海の有無を聞かずに携帯の電源を切る。
会社の仕事を手伝って数日経ち、学校よりもこっちの方が楽しく感じる。
はっきり言って、駅伝大会や行事などどうでもいい。

「天馬、起きろ。社長室に行くぞ。」

ドアを開き、スーツ姿の三郎が入ってくる。
「なにかあったんですか?」
「詳しい話は社長室で話す。」
三郎はそう言うと、足早に社長室へと向かって行った。
「・・・・今日も頑張るか!!」
天馬はカーテンを開け、朝日を浴びる。
そして、カッターシャツに青いジーパンに着替えて社長室へと向かった。


**********


社長室


エレベーターが開くと、天馬は最初に亜樹と目があった。
「おはよう。天馬君。」
「お、おはようございます。」
何故か、天馬は照れてしまう。顔が赤らんでいくのが分かった。

「よし、揃ったみたいだぜ!!」

天馬は聞き覚えのある声に顔を上げ、驚愕した。
「な、なんで!?」
昨日捕獲した水茂が、スーツ姿で笑顔で立っていた。
「おぉ!!来たかね天馬君。では、全員そろったね。」
社長の冥堂はいつもより笑顔で天馬の顔を見る。
一体どういうことだ?
「水茂がなぜ!?」
「彼は、元々悪い能力者ではない。今日からこの会社で正社員として働いてもらう。」
三郎が言うと、水茂は振り向いて天馬に右手を出した。
「そ、その、昨日はすまなかったな。」
「・・・・三郎さんや社長が言うなら・・・・・」
天馬は水茂と握手を交わす。
冥堂はそれを見ると、何度か頷きデスクの上に置いてある資料を三郎に渡す。
「明日は月曜で天馬君も学校だ。今日は家に帰って、休息を取りなさい。」
「え?僕はまだ働けます!!」
天馬はそう言うが、亜樹が天馬の肩に手を置いて首を横に振る。
「あなたはまだ学生。今日は休みなさい。」
亜樹に言われ、天馬は再び顔を赤らめる。
「は、はい・・・・」
天馬は急いで振り向き、エレベーターに乗った。
「そ、それじゃあ・・・」
天馬はもう一度亜樹の顔を見る。
目が合い、亜樹は笑顔で天馬と目を合した。
「さ、さようなら。」
エレベーターのドアが閉まると、天馬は大きくため息をついて自宅へと戻ったのだった。


**********


超能力者専門会社‘アビリティ’前


建物の陰に、断罪能力者集団のメンバーである火山隼人がいた。
「ふ〜ん。ここが奴らの基地か・・・おもろそうやな〜ぁ。」
火山は最上階である13階まで見上げると、不気味に微笑み片手から炎の球を出す。
器用に指で炎の球を触りながら、どこから壊そうか考えている。
その時だった。

「何もするなよ。」

「おわっ!!」

火山が振り向くと、そこにはジャージ姿の志村太陽が立っていた。
「副リーダー!?いつの間にいたんすか!?」
「お前が怪しいから今日はずっと尾行していた。」
「そんなぁ・・心外!!」
火山はそう言いながらも、再び会社の方を見た。
「何もするな。クライムは作戦を練って攻撃するらしいからな。」
「兄貴は慎重やからな〜。わいなら襲撃するけどな!!」
火山は大笑いしながら炎の球を握りつぶす。
志村は火山を見ると、呆れてため息をついた。
「お前は別の仕事をしろ。水茂が抜けた穴を埋める必要があるからな。」
「そう簡単に、能力者がいるとは思えませんけどね。」

「早く探せ!!!!」

志村はとうとう怒り、火山の頭を殴る。
「痛った!!・・・・わ、分かりました。いきやすよ!!」
火山は殴られたところを擦りながら、渋々その場から立ち去った。
「まったく・・・・」
志村は再びため息をつくと、その場を後にした。