ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 激動の乱世 参照100突破w ( No.27 )
- 日時: 2010/11/19 17:42
- 名前: 千尋 ◆X7/d.TmciY (ID: iHur2k3D)
- 参照: 短いです
4話『動き始めた猛者』後編
「へぇ…そうか。魔王さんが死んだ、か…」
“魔王”…かつて人々にそう呼ばれ恐れられた織田信長の姿を脳裏に浮かべ、その人物は本当に残念そうにそう呟いた。
優男な雰囲気を纏うその男の左目は、眼帯ではなく包帯で覆われており、一方の右目は美しい程の黒だったが、今はその目は伏せられている。
「これで…親信長派も終わりか。———あぁ、これでまた俺達も“雑賀衆”も独立した勢力に戻る訳だな」
雑賀衆を指導し先頭についていた彼…雑賀孫市は、大きな溜息をついてそう言った。
織田信長に服従を強いられていた雑賀衆は、大きく親信長派と反信長派の二つに分かれていたのだが、彼は親信長派であり、少し前に反信長派の土橋を倒したばかりだった。
しかし、今回の本能寺で信長が死に、雑賀衆は内で分裂したまま独立した勢力となってしまっていたのだ。
「…だが、そんな時に山陰道…山陽道が大変な事になったらしいな。長曽我部は動かないだろうし、おそらく秀吉は毛利と講和を結ぶだろうな…戦地があんな事になっていたら、そうせざるおえないだろうし。
…ふぅ…俺達はどうするべきだろうな…」
孫市は再び小さく溜息をつくと、側にあった己の火縄銃…“ヤタガラス”に手を伸ばした。
「……ま、悩む暇は無い、か…」
———パァンッ!
そして、眺める様にしてその銃を見ると、彼はその銃を真上に向かって突然発砲した。
周りからは悲鳴が漏れ、場の空気が固まる。
だが、孫市はさっきの弱気な姿勢とは打って変わって、自身に満ちた表情を浮かべていた。
「ま、雑賀衆は元々自由な集団だったからな。どうなるかは、運命任せ…。
俺達も傭兵集団だからな…少々危ない事になろうが、壁はこの銃で打ち倒すだけだ」
そして彼は楽しそうに笑いながらそう自分に言った。
「今の発砲音は何だ!?」
「アイツか、びっくりさせんなよ…ったく」
…まぁ、周りの者の目が冷めているというのを除いては、彼の悩みも解消できた様子だった。