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Re: Voice of the devil〜悪魔の声〜 ( No.3 )
日時: 2010/11/13 16:04
名前: 星都 ◆U9Gr/x.8rg (ID: PWqPGq9p)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=15529

01


ピピッ ピピッ

 ベッドの枕元で、目覚まし時計がけたたましく鳴る。煩い。
 俺は暖かい布団が名残惜しいが、もそもそと這い出た。寒い——。
 
 俺の名前は佐々山良介。近くの公立高校に通う、平凡な高校生だ。…もう一度言う。平凡だ。趣味はゲームだし、成績は中の上。運動神経も上の下。特技と言える物は何も無い。

——典型的な普通男子だ。
 
いや、普通男子という言葉があるのかは置いといて。草食系男子とか、肉食系男子とか居るが、あえて言おう。普通男子だ。恋人も居ない、ガールフレンドもいない。将来ちゃんと結婚できるか心配だ(お見合い結婚か……)。


「良、今日は寒いみたいねぇ」
「…知ってる」
「冬ねぇ」
「……そうだな」

台所で味噌汁を作っている、能天気なおふくろに適当に返事した後、テーブルに座る。

「ふぁあ〜」

自然と欠伸が出る口を必死に押さえていいる間に、湯気が立った白飯が差し出される。

「返品は受け付けないから、早く食べて」

 俺の妹——香里——は口が悪いことが長所でも短所でもある妹が、俺の顔を睨みながら言う。切れ長の目で睨まれると、とっても痛い。胸にぐさっと来て、一発でノックアウト。
 しかし誰に似たのか、その美貌で、口悪さもカバーしてしまう。シュッとした顎に厚みのないピンクの唇。切れ長の目にはおまけとして長いまつげもついている。背は平均より小さく、胸も厚みがないが姿勢が良いために、あまり気にはならない。
 ちなみにおふくろは昭和の日本のお母さん、と言うような、少しふっくらした優しいおふくろで、親父は昭和の頑固親父、と言うのでいったい誰のDNAを受け継いだら、こういう美人が生まれるのか。一度科学研究部に課題として出してみたい気がする。

「良!早く食べてって行ってるでしょ!!」
「…前々から思ってたんだが…」
「何よ」
「…どうして自慢の兄のことを良と呼び捨てにするのだ?」

妹を持つ者としては「お兄ちゃん♪」と言われるのが、憧れというものである。しかし、俺の妹は憧れを木っ端みじんにこわしたのだ。

「は?こんな何の取り柄もない兄なんて、呼び捨てで十分でしょ。
 早く食べてさっさと学校行きなさいよ」
「兄のささやかな憧れを壊しおって……」

そんな俺のつぶやきをギロリ、と言う擬音語がとても似合う睨みを俺に浴びせると、目の前に置いてあった俺の白飯を台所に持って行った。

「返品は受け付けないんじゃないのか?」
「返品じゃないわよ。私の愛の鞭よ♪」

そう言うと、香里は俺の足をかかとで思いっきり踏んでいった。
 残ったのは足の痛みと、空腹だった。