ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Voice of the devil〜悪魔の声〜 ( No.26 )
- 日時: 2011/01/08 19:14
- 名前: 星都 ◆U9Gr/x.8rg (ID: PWqPGq9p)
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「まったく…。いちいち細かいことにこだわる男ですわね」
いや、これは全く細かくない。
旅行用鞄4つ、何故か風呂敷に包まれた荷物が1つ、アタッシュケースが3つ。
それから細々としたバッグが6つ。合計14個のバッグが俺の部屋を埋め尽くしている。
残ったスペースには何故か粗大ゴミが置かれている。
「やはり来る前に荷物を減らしたつもりですが、多かったですわね」
「これで減らしたのか!?」
「女は何かと持ち物が多いんですのよ」
そういえばそういう言葉は香里が言っていた気がする。
それにしても、どうしてこう女というのは荷物が多いのだろう。
永遠の謎だ……。
「……じゃあ何故俺の部屋に粗大ゴミがあるのだ」
「ああ、それはあなたのお母様が私の部屋を掃除するのに邪魔な物ですわ。
ゴミ達にはこんな部屋が十分ですから」
——それは俺がゴミというのか?
いちいちかんに障ることを言うな、こいつは。
「まぁ、詳しい説明はお母様から聞くのでしょう?あたくしが言うことではありませんわ」
「いや、お前が言うことだろ」
「……ま、良いですわ。それより、他に何か聞きたいことはありますの?」
「ありすぎて困るくらいだ!!」
くそっ。こいつ…、本当にむかつく。
「まず、お前が来た悪魔界のことだ。もっと詳しく聞きたい」
「詳しく?たとえばどんな?」
「たとえば……今の悪魔界は人間界を滅ぼしてどうするんだ?」
一番気になるのはここだろう。
悪魔界が人間界を滅ぼすと言うことに関しては納得した。……いや、納得はしてはいけないと思うけど。
納得はしてはいけない気がする。
「あら、そこはまだ説明してなかったわね」
そう言うと、ローズは俺のベッドに腰掛けた。
そして、またドラマ口調のように話し始めたのだ——。
新悪魔界の長——ブラッドはそれはそれは人間界を憎んでいました。
自分たちが生きていく上で人間達がとても大事な者だというのは、ブラッドも十分に承知の上でした。が、それでいてブラッドは気にくわなかったのです。
『人間のぶんさいで生きているなんて鬱陶しい。世界というものは我々悪魔界だけで十分だ』
これがブラッドの持論でした。
「つまり——。ブラッドは世界をすべて自分の手中に収めようとしています。
まずは自分が気にくわない人間界から…と言うことです。分かりましたか?」
——うん。全く分からないや。
俺の頭が悪いのか。それともこの状況が悪いのか。
絶対後者であって欲しいな……。
「ちょっと、理解できましたの?そのすっくない脳みそで」
「酷い…。俺は酷い扱いだ…」
ここは俺の部屋なのに、我が物顔で居座っているこの女……。俺をなんだと思っているんだ。
「え?あたくしの契約者と思っていますけど?」
「だから、俺は契約した覚えは——って、ん?俺は何も言っていないが……」
「……ま、それは置いといて」
置いとくのかよ!
ここは置いてはいけない気がする。まさか読心術?俺の心はすべてお見通しと言うことか?
こいつにはまだまだ謎が多いな……。
「これからもよろしくお願い致しますわ。居候する身として——“契約者”として」