ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

無題『#1』 ( No.7 )
日時: 2010/12/02 16:51
名前: 舞音子 (ID: .ZLG9XHf)

帰り道は3人とも同じ方向である。いつものように他愛のない学校での話をして永田、並河が優徒を冷やかしながらこの街でもっとも活気のある商店街を歩いていた。

夕暮れ時店じまいをする店が目立ち会社帰りのサラリーマンなども目につく。母と手をつなぎキャッキャと笑いながら無邪気な子供を見ると気持ちが和む。

「万引きだぁーー!!待ちやがれー!」

後方で大声が聞こえ3人は立ち止り振り返る。
フードを深くかぶり何かを抱え込むようにして「毎度八百屋」のおっちゃんから逃げている。

その男は優徒たち3人の間をぶつかりながらも逃げていく。

「ってぇ!!あいつむかついた!おっちゃんオレらに任せな。」

そう言い永田はエナメルバッグをその場に置き優徒、並河に「いくぞ」と合図し男を追っていた。
並河も後に続く。

「おっちゃん待ってな」

ニィッと笑顔をぜぇぜぇ息を荒くしている八百屋のおっちゃんに向け、優徒も後を追った。


「くそっ待ちやがれ!」

男は足が速く日々部活で体を鍛えてる3人だがなかなか追いつけなかった。


男が角を曲がり裏路地へと入っていく。永田、並河そして優徒の順番でそれに続く。

裏路地はしんみりしていて暗かった。地面にはところどころ水たまりができている。

すると男は水たまりに足を滑らせたのか派手に倒れる。

「ラッキー!」

大声でそう叫ぶと永田は倒れている男の背中にダイブする。
捕まえたと思ったが男は立ち上がりさらに逃げようとする。

「こんにゃろー!」

続いて並河が男の足をとらえる。動きは遅くなったものの一歩ずつだが男はまだ先に進もうとする。

「あきらめろ!」

最後に優徒がもう片方の足を捕まえる。
3人がかりでやっと止めたが男はなんの反応もせず言葉も口にしなかった。

「盗んだもの返せよ。」

永田が背中にしっかりしがみつきながら詰め寄る。
すると男の目の前が歪み始め黒い隙間が出来た。

「「「え?」」」

3人の頭には「?」しか浮かんでこなかった。

次の瞬間、男は3人をしがみつけたまま黒い隙間へと踏み込んでいった。

「ちょっ待て!」

並河がそう叫ぶが男には聞こえなかったらしい。




虚無の中へ---------------------