ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 日常+@ ( No.106 )
日時: 2010/12/15 15:00
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

答えるには、時間がかかる。
質問することには全然いいけれど、答える側というのは慣れていないから。

「会った事ないよ」
「でも、似てる気がする。 私ね、あまり昔を覚えてないわけね。 友達、いたような気もするし、一人ぼっちだったかもしれない」

江波戸は言って、笑う。

「死にたいけど、死ねなかったと思うんだよね。 ゴチャゴチャで覚えてないけど、死ねなかった。 私は、死ねなかったんだよ」

何度も何度も、言い聞かせるように。

「痛いの、嫌。 だからあっさり死にたい。 蟻みたいに、お腹を潰してもジタバタ生きるのは、ちょっと嫌い」
「ダンプカーにでも撥ねられれば? 電車のホームに飛び降りれば?」

死の提案をすると、江波戸は顔をしかめた。

「汚く死ぬのも、嫌かな」
「我がまますぎるよ。 それじゃあ死ねないのも当然だ」
「うん。 羨ましいよ。 だからね、私、捜してるの」

焦りと、高揚感が漂う。
あ、もう日が沈みかけてる。

「私を殺してくれる人を、捜してるの」

ああ、あれはそうだ。学校だ。学校の屋上、対峙する生徒たち。うん、あれは私だよ。私と誰だっけ。あの時の私はまだ青二才だったからさ死ぬのなんて良くないよみたいな正義論を次々と並べてでも本当は人が死ぬのをもう見たくなかったからで間違ってズドンで痛さはなくてだけど冷たくてさあ、

「あんたは、私を殺してくれる?」

そういうのはさ、

「千影くんに頼め、ばか」

思った事が口から出て、茫然とする。
帰ろう。
もう、なんでもいい。 本当は色々と話を少ししたかったけれど、この子といると飲みこまれそう。

さぁ、早く。 走れよ。 走れ、走れ、走れ──