ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

03「心の迷子」

「───」
大きなお屋敷だ……。中にはお姫様のように美しい人がいるのかな……。

「うー!! あげないっ!」
まるで血で染まったように真っ赤なバラを持った小さな女の子。
「ちょっと、金糸雀。待ちなさい」
それを追いかける赤いドレスの女の子。
「あははっ!!」
その二人は鬼ごっこのように薔薇の咲き乱れる庭を駆け巡る。

まるで、天使が戯れ、遊んでいるように美しかった。

「───」
“入ってみたい”心がそう思うと、足が勝手に動いた。

「あら───」
そこには、桃色のドレスを着たお姫様のような背の高い女の人。
「すみません! 勝手にお庭に入ってしまって───!!」
「それは構わない。名前は?」
「あっ、日向 葵です」

「くくっ、葵……。綺麗な名だ」
「っ───」
背筋がゾクッとした。何となく、僕の本能を刺激するような……。
上手くは言えないけど、そんな感じがした。

「さぁ、紅茶でもどうかな?」
「あっ、ありがとうございます!」
庭の真ん中に在る、宮殿に在るような椅子とテーブル。

「あら───」
今まで鬼ごっこをしていた赤いドレスのお人形は、僕の存在に気づいて驚く。
「こんにちは」
笑顔であいさつすると、顔を背けられた。

「貴方も、迷子なのね───」