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第1章 世の中とはそんなもの ( No.1 )
日時: 2010/11/15 22:27
名前: 第1章 日常とはこんなもの (ID: 81HzK4GC)

「現実って、何か寂しいよね……」

小花はふと、呟いた。学校の帰り道、隣にいるのはいつもの通り、幼なじみの卯太であった。
学ランに見を包んだ少年と、セーラー服の少女と、風に舞う木の葉。
それは、まるで、一枚の写真のようであった。

「何、またそれ? まぁ、そうかもね。仕方ないと思うけど」
「仕方ないこと……か」

遠くを見つめるような目で道を見据える小花を横目に見ながら、卯太は溜め息をついた。

「小花はさ、もっと楽しいこと考えたら良いと思うな」
「何それ。卯太はいつも楽しいこと考えてるの」
「いや、そりゃ無理かもしれないけど……」

卯太は困ったように苦笑して頭をかいた。
街路樹は紅葉して衣替えを向かえるため、その葉を散らしていた。
木の葉がはらりと小花の頭の上に着地すると、彼女はそれを一度つまみ、
じっと見てからゆっくりと放した。
葉は風に乗ってひらひらと飛んでいったが、すぐに落ちてしまった。その上を、人が通り過ぎる。

「可哀想だね」

小花はそれを見つめながら言った。

「もう一度飛ばせてあげたのに、やっぱり落ちちゃうんだね。
 そして誰にも気づかれず、みんなに踏まれて死んでいくの……」

一際強い風がびゅうとふき、茶色い葉の海が波を立てる。
それを見つめる小花の顔に、表情はなかった。

「世の中ってさ……冷たいよね、うた」
「まぁ、そんなものだよ、小花」

卯太は静かに小花の手をひいて、再び歩き始めた。