ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: -さよならの唄- ( No.4 )
- 日時: 2010/11/17 17:47
- 名前: 黄昏 (ID: 81HzK4GC)
朝。冷たい空気から逃げるように、卯太は毛布にくるまりもぞもぞとしていた。
下から母親が呼ぶ声がして、嫌々ながらに起き上がると、寝ぼけ眼をこすりながら階段を降りる。
「卯太、急がないと遅刻するよー」
母は、肩まである茶色の髪を一つにまとめ、朝ご飯を食べていた。
卯太はぼーっとした頭で母の言葉を繰り返した。
(…………遅刻するよー?)
ふと時計を見て。着替えてもいない自分を見て。
朝ご飯を食べる母を見て。働かない頭をフル回転させて。
そして気付いた。
「あぁぁぁぁぁぁ! 何で起こしてくれなかったの!」
「起こしたでしょ。ついさっき」
「いや遅いからっ!」
卯太はそう叫びながら、着替えるために再び階段を駆け上がっていった。
「こういうことは、落ち着いて考えてみると自業自得だったことに気付く。
そして後から、母をせめたことを恥ずかしく思うものである。」
その日、卯太は日記にそう書き足したという……。
*
「ごめん、小花!!」
いつもの待ち合わせ場所にやっとの思いで到着すると、小花は今日も、無表情で突っ立っていた。
卯太が手を合わせながら必死に謝っていると、小花は小さく首をふった。
「別にいい。怒ってない」
(いや、それ無表情で言われると逆に怖いんだけど……)
卯太はそう思ったが口には出さず、胸にしまった。
「ごめんな、小花。じゃ、行こっか」
卯太は冷たい小さな手を引きながら歩いた。今日はいつもより、少し早歩きだ。
学校までそんなに距離はなく、15分ほどでつく。
「卯ー太ー」
突然後ろから声をかけられた。振り向くと、比較的大柄な少年が立っていた。
「なんだ、啓か」
「ひどっ。なんだ。は無いだろー。あ、おはよう園辺」
「…………」
啓に声をかけられたが、小花は反応しなかった。卯太以外とは殆ど喋らないのだ。
啓は特に気にする様子もなく、卯太の隣に並んだ。
「卯太ー、今日数学の小テストじゃん? オレ昨日寝ちゃってさ。教えてくれー」
「そんなの勉強してないのが悪いんだよ。知るかー」
「卯太が冷たいぃー」
啓が口を尖らせる。毎日のように行われているやりとりだ。
こうして、啓と登校することになった卯太であった……。