ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 血觸症−Murderer(s) syndrome−  ( No.1 )
日時: 2010/11/21 22:26
名前: アぶそりゅート (ID: 3CNtvX8U)

 血觸症…それはヨーロッパ系の母の一族が代々発生させてきた能力であり、それに引き換え人殺しを強要される悍ましいものだ。
 15歳で発症すると言われるそれは、腕力や脚力を飛躍的に高め、さらに他の身体能力も一時的に上げる。

あくまで一時的であって、その能力を持続させるには【殺人者】を定期的に殺さなければ、脳に過負荷を与え、血を全て抜き取られ、死に至らしめるという恐ろしい物だった 

 ゴーン……ゴーン……
 チャイムを境に教室の中が緩やかな雰囲気に切り替わる。
「はい、じゃぁ授業はここまで、号令おねがいします」
「起立、礼」
 先生が教室を出た後、すぐに華波と智嗣が俺の机の前まで来た。
「なぁ、交、今日の帰りにこないだ新しくできたでっかいショッピングモールいかね? 」
 智嗣がニコニコしながら聞いてきた。
 こいつが言ってるのは、先週オープンしたばかりの最大級を誇る 大きさのショッピングモールだ。
「別にいいんだが、あそこって俺たちが行きそうな何かあるのか? 」
 そう言うと、華波はポケットから一枚の紙を取り出した。
「これこれ!あそこにスッゴい美味しいって評判のケーキ屋さんがあるの! 」
 華波が見せてくれたチラシには数多くの受賞している賞や、ケーキを作るパティシエの写真があったり。
 華波はあまり甘い物を外で食べているイメージは無い、というかわざわざ出かけて食べなくても華波の家には数年フランスで修行したパティシエが専属でいるっていう。これは恐らく智嗣が華波を誘って俺を誘うように促したんだろう。
「要は、智嗣が行きたいんだろう? これ」
「ななななぜばれた! 」
「超 能 力」
 智嗣は「なななんですとー! 」と言って驚いている、華波はクスクスと笑っていた。
「まぁ、別に用事はないし、行ってもいいぞ? 」
「お? 今になってツンデレ発動? 」
「なんで今のでツンデレになるんだ!? 」
 ガチャッというドアの開閉音と共に、教室に担任が入ってきた。
「はーい、終礼はじめるわよー! 」
「じゃぁ、交くんあとでねー 」
 担任が教卓に立ち、立ち話していた生徒たちは席についた。
 
数分後。

 明日の授業の連絡や、なにやらをしゃべった後、担任の先生は突然少し真剣な顔をして口を開いた。
「最近、ナイフを持った切り裂き魔が出没してるようですね。みなさん、特に部活などで帰りが遅くなっている方は十分に気をつけてください」
 切り裂き魔って確か、数人も死傷者をだしているにもかかわらず、未だに証拠すら見つかっていない殺人狂…だとか、知り合いの刑事に少し聞いた程度だが。
 担任はそれだけ言った後、またいつもの口調に戻りった。
「はい、じゃあ今日はここまで、みなさん良い週末をー」
 あんなリアルな話をしてまたその調子に戻りますか……
『へぇー、ここらにそんな面白そうな奴がいるのか、定期の奴もまだだし、なにより近いしな。そいつで血觸するのもありじゃないのか? 』
 頭の中から声が聴こえる、意識の部屋(?)にいるアイツが話しかけてきたのだ。
[警察も手がかり一切見つかってないのに、どうやって見つけるんだよ。というかまだ血觸しなくてもいいんだ、極力人を殺したくない。]
『どうかな、最近なんにも起こらないからツマラナイとか思ってるんじゃぁないのか? 』
 頭の中のこいつは、見るからにニヤニヤして聞いてくる。こいつはいつも知ったような口を聞く、えぇい忌々しい。
—実は、この頭の中の声は自称・「母方の一族の祖先」
俺の人格の片方は殺人狂を生んだ張本人でもあり、最初の血觸症患者だ。