ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 貴方に生を、僕に死を ( No.1 )
日時: 2010/11/19 23:46
名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)

                           一話 -死にたがりのラプソディ-開幕

窓から見える雪は、街灯に照らされ、ぼんやりとしながら落ちて行く。それでもなお、雪は降り続き、地面に踊り落ちたり、街灯や屋根に降り積もったりし、白の世界が紡ぎ出されていく。それを穏やかな表情で見つめる少年。白の世界を、飽きもせずに眺めていた。
そんな真っ白の、純白の、汚れを知らない白の世界に突如、赤黒い何かが流れ落ちた。
「—————ッ!?」
血だ、ということに素早く気付く少年。しかし少年は叫ぶことも、カーテンを閉めることも、その場にしゃがみ込むこともせず、ガタン、と椅子から立ち上がり———窓を開け放ち、跳 ん だ 。
「————————」
跳びながら何かを言う。そしてそのまま血の流れているところへスタンと下り———られる筈もなく、派手な音を立て地面に転がる。それでもがばっと起き上がり、血の流れている場所へ向かう。力強く、しかし、フラフラと。そしてそこで———2人は出会ったのだ。




                           ♪



「だ……れ…?」
自分の腹に、腕に、顔に、足にナイフをぶっ刺している少女が呟く。そんな少女に少年は、まるで知人のような態度で、
「心配したよ、大丈夫?どうしたの!?」
そう言って少女の顔を覗き込む。勿論、少女としては少年のことなど何一つとして知らない身なので、いきなり話し掛けられ、びっくりしたようだった。そんな少女の反応を知ってか、少年は優しく言う。
「僕の家、此処なんだ。良かったらおいでよ。手当てとかも、するしさ」
「ッ……いい、別に」
しかしその優しさを撥ね返すように、頭を横に振る。
「えっとじゃぁ…病院に行きたいのかな?だったらこの道を真っ直ぐ行って、そのまま左に曲がったら、直ぐ病院だよ」
と、ごく一般的な提案もしてみたが、やはり少女は首を横に振るだけだった。
「うーん、僕人の嫌がることをするのは嫌いなんだけどさ……今から猛ダッシュで僕に病院連れて行かれるか、僕の家で手当てされるか、どっちがいい?」
そう訊かれた少女は、最初はやはり「嫌だ」という風に首を振っていたのだが、それが無理だと解ったらしい。
「手当て……」
と、小さな声で呟いた。