ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 貴方に生を、僕に死を ( No.2 )
- 日時: 2010/11/19 23:45
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
「はい、いいのになった」
「……うん」
沢山の包帯を巻いたりガーゼを貼ったりとし、普通ならば疲れ果ててぐったりしている筈だが、少年はにっこりと笑って、「仕上げ」という感じで左目に眼帯を着ける。
「それにしてもびっくりしたよ。…って、君のほうがびっくりするか…。知らない人がいきなり窓から飛んできたんだもんね。本当、御免ね。でも、君みたいに凄い怪我とかしてる人を見ると、とても放っておけなくてね…」
「…………」
無言ながらも、こくこくと頷いてみせる少女。
「あ、ねぇ、訊き忘れたんだけど、名前は?
———僕は加藤 祐樹。宜しくね」
こく、と頷いてから、小さな声で少女は自分の名前を呟いた。
「丘実 茉梨……」
ちなみに、茉梨があまり喋らないのは無口な所為もあるが、怪我の所為で声が出ないというのが今の状況には合っている。
「わたし……死にたいの。皆から必要ともされない、生きてたって邪魔になる、要らない存在だし…。それでとりあえず家出してきたんだけど………本当に知らない街に来、て、迷っちゃって……ケホッ…」
長く喋りすぎたのだろうか、咳混じりに血を吐く。
「あぁ、大丈夫!?無理して喋らなくても良いよ。僕はいつでも真剣に君の話を聞くって、約束するから」
にっこりとただ純粋な笑顔で、茉梨の話を中断させる。「また明日にでも、いつでもいいから、きちんと話せる日に話そう」と。
「……(わたし、此処に住むこと前提なの…かな?)」
そんな平凡なような非凡なような疑問を抱きながらも、死にたがり少女・茉梨は、少し祐樹の家で匿ってもらうことにした。これから2人に訪れる、怪しい影の正体も知らずに———祐樹は2階の自室のベッドで、茉梨は1階のリビングのソファで、寝ることとなった。
1話 -死にたがりのラプソディ-閉幕