ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 貴方に生を、僕に死を ( No.5 )
日時: 2010/11/20 15:52
名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)

                           2話 -心の中のグラフィティ-開幕

雪の降り積もる朝。制服を着ながら祐樹は鏡を見る。
祐樹の学校の制服は、この辺りでは珍しい学ラン・セーラーなのである。その学ランに付いている校章がずれていないかなどを確認すると、トタトタと階段を下りていった。

                           ♪

リビングへ向かった祐樹がまず目にしたのは、血まみれの茉梨の姿だった。夜中に殺してきたモンスターの返り血だとか、そんなのならまだ良いが———此処は映画の中でもなければ2次元でもないのだから、そんなことが有り得る筈が無い。つまりそれは——茉梨の血、ということになる。
「ま、茉梨さん、何やって……」
それでもまだ腹に包丁をぶっ刺そうとする茉梨の手を、祐樹は必死に抑え付ける。
「茉梨さん、待って!僕はまだ君の話を聞いてない!だからまだ死なないで!」
「放、して…。わたしはッ…」
「茉梨さん、言うこと聞かないと病院に運びますよ」
その言葉が効いたのだろうか、茉梨はしばらく暴れていたが、やがて持っていた包丁を床に落とす。トン、という音がして、茉梨同様に血まみれになったカーペットにそれは落ちた。
「さぁ茉梨さん、朝ご飯でも食べましょうか———その前に、シャワー浴びてきて。血まみれさんとご飯一緒に食べるなんて、食欲無くなっちゃうよ」
そう言って、茉梨を風呂場まで案内する。
「シャワー浴びるだけだよ。絶対に戻ってきてね」
とそんな大袈裟な言葉を言って、茉梨にバスタオルを渡す。
「……ん」
解ったのか解っていないのか、曖昧な返事をしながら、祐樹の目の前でジャージを脱ぎ始める茉梨。
「うわわわっ、茉梨さん、着替えは普通、僕があっちに行ってからやることだよ!
「?別に、良いと思う。一緒に暮らしてるんだし」
「そう言ってくれるのはとても嬉しいけど、駄目だからね!?ほらそう言った直後から脱がないでー!!」
何を言っても駄目だろうと確信したのか、祐樹はリビングへと茉梨の血を拭きに行くことに決めた。