ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 貴方に生を、僕に死を ( No.51 )
- 日時: 2010/12/18 13:45
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: ノイズって名前でも活躍してます←
お父さんとお母さんと姉さんと弟と僕で、加藤家は構成されている———否、されていた。だってもういないから、僕以外。お父さんとお母さんは、10年前行方不明。姉さんは5年前に殺されて、弟は離れて暮らしてたけど、病気で2年前に死んだ。
だから僕も死のうと思って、何度も何度も自傷行為を続けてきてた。最初はリストカットだった。
家に閉じこもって、部屋に鍵掛けて、密室にして、切ってた。今では大丈夫たけど、あの頃の自分の部屋の臭いは、本当に嫌だった。だって血の臭いがするから。
で、自傷行為から自殺未遂まで気づけばエスカレートしてた。誰も僕を止めないから———止められないから。誰も僕を責めないから———責められないから。まだ腹に残る深い、ふっかい傷跡が、未だに少し痛む気がする。足やら手にも微かにそれらしいもので、かさぶたが付いていたりもした。
でも、そこまでしても僕が死ねなかった理由、それは、
『祐樹。人間というものは、いつか必ず終わりがくる。俺や奏、祐一や優南も。
それでな、俺が何を言いたいかというと、俺達がお前より先に死んでも、お前は後追い自殺なんてこと考えるんじゃないぞって言いたいんだ。お前は俺達にいつでもついてこようとするからな』
お父さんのそんな言葉を思い出した日。小さい頃に、お父さんとお母さんが行方不明になる3日前に、言われた言葉。
今それを思い出せば、2人はもう死ぬということが確定されていたのかもしれない。2人はとっても愛し合ってて、僕達も愛されてて、幸せだったって思ってた。でもそんなのは僕が生まれて5年で終了。
2人はその日行方不明になって、今でもずっと、家に帰ってこない。ニュースでは放送されたのを見たことは無いが、多分もうこの世にいないんだろう。
で、その次殺されたのが姉さん。僕が10歳の時。確か姉さんは15歳で、今の僕と一緒な歳だった。
友達の家に行っていた筈の姉さんが、突然玄関のドアを激しく叩いて、『開けて、開けて』と狂ったように叫んでた。
開けた時にはもう手遅れで。血まみれで、四肢切断されて、頭だけ無い姉さんの姿があった。
その頃の僕はもう既におかしくて、姉さんのそんな死体を見ても、叫ぶことは無かった。逆に、そう、にっこり笑って「おかえり」って言ってた記憶がある。
僕はそのころから弱虫になってたんだ。
弟は、普通にさっきも言ったように病死。病気で死んだ。昔から病院通いの子で、滅多に顔を合わせることなんて無かった。
電話で彼の死を医師に告げられた瞬間、大量の“変な物”が僕の身体から溢れ出した。
ハハハハって笑って笑って笑い転げて、ガシャンと電話を壊して、尚も笑い続けて。
で、気づいたら僕は笑顔しか無くって。
笑顔以外の顔が、出来なくて。
涙なんて、体内から水分が全て吸い取られたのかと思うほど出なくて。
ハッとすれば中学生で、何故か制服が届いてた。祖母が買ってくれたらしい。
行きたくないのに、そんなところ。
学校行って、まず初めに言われた言葉は『不登校ニート野郎』だった。まぁ、後から聞いた話、それはいじめではなくてただのからかいだったらしいけど。
でも、笑顔で毎日過ごしてたら、何故か皆僕に優しくなってきて。
で、僕も人に優しくなって。
何故か自分より他人を優先してた。
昔みたいに、硬く生きててもいいことなんて無いってわかったから。
笑顔だったら、昔よりは明るい人生が送れるから。
ああ、ああ、ああ、ああ、ああ。
記憶がくちゃくちゃだ。
混じり合う。
昔の僕と、今の僕も混じり合う。
全部全部ぜーんぶ混じって、バンって破裂させちゃおうか———————