ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 貴方に生を、僕に死を ( No.53 )
日時: 2010/12/18 16:00
名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
参照: ポアロンですが何か?←

                           ♪



「うあああぁぁぁっ!?」

突然飛び起きる祐樹。辺りは真っ白な壁。床も、カーテンも。自分の着ている服も白い。窓を見ると、白い。雪が降ってるから。

「……あ。起き、た。茉梨に何。した」
横の椅子に座っているのは茉梨の妹である由梨。辺りを見渡しても、茉梨の姿は無い。

「———面倒くさいなぁ、動くの。
ねぇ由梨、丁度良いとこにいるな、お前。

茉梨は何処行った?」

そして、前日の夜からの祐樹の姿も、無い。






                           ♪






『ちょっと加藤さん!加藤 祐樹さん!?何処行くんですか!!?』

———黙れよ五月蝿いな。
———俺は今から、昔の腐った記憶を呼び戻したあの女を、1発殴らないと気が済まないんだよ。

看護師の叫びを無視して、真っ白な、病院の服のまま飛び出した。裸足で、雪の降る中傘も差さずに。

そのまま祐樹は走る。
          走る。
             走る。

Run。Run。Run。

「……冷た…」

冷めた声で、冷めた表情で言い放つ。
いつもの笑顔じゃなくて、困った顔でもなくて、怒ってもない、無表情。

1つ考えられるとすれば、2重人格。

昔の記憶を思い出すと、笑顔が消えてしまう。

そんな人格。
          アマ
「ああ、ったく。あの女一体何処消えた?」
走るのが疲れた、という声で、近くのベンチに座る。
勿論今の祐樹は、とある少年くらい目立っている。

そう、とある少年。

『チリンチリン』「アニキ、何やってんすかー、そんな恰好で。目立つのは勝手っすけど、それは目立ちすぎて逆に浮いて、ますぜ?」

冬の雪が降る寒い中でも、自転車と一緒。
———伊谷 唯。

「は?お前のが目立ってんだろ。自転車なんだから。
それより茉梨知らない?」
当然唯は祐樹の人格が何故か違うことに不安を抱いた。
が、

「あー…茉梨っすか…。それなら多分アニキの家ですぜ」
「あぁ、そう。
教えてくれてありがとう、じゃ」

軽く手を振って、降り積もった雪の上を走っていく祐樹。

「……茉梨がアニキを殺しかけるとは…な…」

そんなことを呟きながらも、自転車少年・唯は、祐樹とは逆の道———つまり、病院へと向かった。






                           ♪






「あぁ、懐かしいな、懐かしすぎて壊したい」

自分の家を見上げながら呟く祐樹。


「おい、茉梨!!!」


それから力一杯、探しに探した相手の名を呼ぶ。




「1発殴らせろよ」