ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 貴方に生を、僕に死を ( No.55 )
- 日時: 2010/12/19 08:55
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=15932
『ガチャッ』
ドアを開ける音がした。
「茉梨。お前さ、よくも俺に変な過去思い出させてくれたな」
「ごめ……なさい」
泣いていたのだろうか、目の周りを真っ赤に腫らして呟く茉梨。
「あーあもう、謝らなくていいからさ、殴らせてよ、1発。さっきも言ったけど」
そんな茉梨にいつもの笑顔をみせず、冷酷な笑みを見せる祐樹。
「お前の所為で俺はイライラしてるんだから」
自分の頭の中に渦巻いている感情を、全て茉梨の所為にし、茉梨に当たる祐樹。
「黙ってないで、何か言えよ、嫌だとか、どうぞとか」
「…………がう…。違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!あなたはそんな人じゃない!貴方は違う、偽物!だってだってだってだってそんなこと言う人じゃ———」『パァンッ!!』
「五月蝿いな、近所迷惑になること少しは考えろよ」
無表情で、無表情な声で、でも怒りを持っている声で祐樹は。
「——————————————————ッ!!?」
茉梨をかつて誰も殴ったことの無いその手で、茉梨を叩いた。
(———ねぇ、そろそろ僕の体内に戻って!)
(———これ以上茉梨さんを傷付けないでよ!)
———ならお前は、この女に思い出させられたあの過去を見て、嫌な気分にはならなかったとでも?
(———それは…。でも、今の茉梨さんと僕をみてるほうが、僕にとっては嫌な気分だよ!)
体内で人格同士争う祐樹。否、祐樹“達”と言ったほうが正しいのか。
「茉梨ッッッッ!!!!!」「アニキ、女の子虐待して楽しいですかィ?」
その時。
2つの男女の声が聞こえた。
1つはただただ茉梨だけを見ているとでも言ったような雰囲気で。
もう1つは少し馬鹿にしたような声で。
(———唯君、由梨ちゃん!!?)
———糞餓鬼が。
「アニキ、あんた今世界で一番格好悪い奴ですぜ?」
「茉梨傷つけた…。許さ、ない。茉梨は、ワタシだけの、もの。なの。だ、から。茉梨に、触れて。茉梨の、声を聴いて、茉梨を傷つけて、茉梨を殺す。のもワタシがやる。こと。
ワタシは、お前。が嫌い。でも、今の。お前の方が、もっともっともっと、も——————っと、大っ嫌い」
そう言い放ってから由梨は茉梨に駆け寄って、両手をバッと拡げ茉梨を守ると言わんばかりの目で、祐樹を睨みつける。勿論ナイフを構えて。
「ほら、アニキ。今のうちにさっさと人格変わっとかねェと、由梨に嫌われるのは百も承知ってとこっすけど、茉梨にも嫌われますぜ?」
そんな由梨を見て、小馬鹿にしたように笑う唯。
「勿論、オレは別に嫌いになんかならないっすけどね。
だって人間は全て、オレの嫁なんすから」
聞き逃したくなる程の台詞を付け加えて。
「で、早くいつものアニキに戻してくれませんかね?オレもオレとて、まだあっちのアニキのが好きなんすよ。
恋愛的にも、人物的にも」