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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 戦国の世に生きる・弐(参照200突破! 有難うございます!) ( No.82 )
- 日時: 2010/11/23 20:46
- 名前: 鏖 ◆TeAoSh7Hf6 (ID: BcdVt4VG)
第弐拾話「 」
「美麗───」
血まみれの光好の掌が、美麗の頬を伝う。
「───」
美麗は無言で瞳を閉じていた。
「所詮は貴様も謀反人か」
瞳を開き、冷たい言葉を浴びせる。その顔は、怒っているようでもあった。
「───私は、私は最後まで愚かだった父上とは違う───!!」
と言って、自分が持っている鎌で、喉を貫いた。
「───!?」
光好が、地面に倒れる。地面は血に染まっていく。
「光好、待て───。最後に伝えたい事がある───!!」
恐らく、どのような手当てをしても光好は死んでしまう。それでも伝えたい事。
「───」
美麗が大切な何かを言いかけた時、光好に息はなかった。
「光好、光好!?」
美麗様が必死に光好さんの身体を揺らす。
「やだっ、何───!?」
あたしの手と足が透けてる───!? だんだん、気持ち悪くなってきて、視界もぼやけてくる。
美麗様が必死で叫んでいる言葉も聞こえない。
「っ───、光、好───」
最後に聞こえた美麗様の声は、泣いているようでもあった。
「っ!?」
ここは、学校!? あたし、戻ってきたの───!?
「きょ、教科書───」
震える手で教科書を開く。そこには、こう書いてあった。
“明智光好は、最期に「私は最後まで愚かだった父上とは違う」と言う言葉を残し、自刃。
美麗はそれを見て「手厚く弔え」と言い、生涯で初めて涙を流した。
美麗の腹には、光好との新しい命ができていたと言う”
「そんな───。こんなのって、ないよ───」
あたしは泣いていた。人前でも構わず泣いた。
完
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