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Ⅸ-「心はまだ動いてる」

「───」
奪い取った黄薔薇の指輪の血を拭く。
「怪我は? 大丈夫か?」
頬の傷口を指で押さえると、人形のものとは思えない、グロテスクな赤い血が指に付く。
「───はい」
まだ赤薔薇乙女、紫薔薇乙女、青薔薇乙女、銀薔薇乙女、白薔薇乙女がいる。
まだ、先は長い───。

「着いたぞ」
色々な想いにふけっていると、あっという間に着いた。
だが、中から物音。喋り声も聞こえる。
「待て───」
大剣を構えて、扉を勢いよく開ける。

「───おや」
その男の指には銀薔薇の指輪。銀薔薇騎士だった。
「人ン家に勝手に入って何用だ?」
明らかに警戒している態度で、銀薔薇騎士を睨む。
「まぁ、そう怖い顔をなさらずに。少し休憩していただけですから───」
そう言う銀薔薇騎士の隣には、美しい顔立ちの銀薔薇乙女がいた。
「行きますよ、海柘榴」
ベッドから立ち上がり、海柘榴の手を取る。

「あと、失礼ながら掃除させていただきましたので───」
と言って、家を出て行く。確かに、部屋は長年放っておいた割には綺麗だった。

「ちっ、胸糞悪ぃ……」
なんだ、あいつは……。いずれ戦うのか、あいつと……。

「あら? ちょっと雅。人がいるわよ?」
と、もう一組の契約者が現れた───。