ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 片腕の魔術師 ( No.10 )
- 日時: 2010/11/23 08:18
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
(此処から書き方が少し代わるかもしれません←)
建物の屋上へと飛ぶと、其処には彼が何を考えているのか分からない笑みを見せながら立っていた。
威圧感、とでも言うべきだろうか。彼が立っているだけだと言うのにプレッシャーを感じる。
けれどシアは慣れているのか、平然そうな顔で彼と対峙している。凄いもんだと思う。
風が、ざわめく。
暫くして痺れを切らしたのかシアが突然剣を構えて彼の方へと走ってゆく。
私は動かない。何故かと言うと、これはシアから受けている指示でもあるから。
風が、ざわめく。
シアの白金色の髪が逆立つかのように上がり、風と共に走るかのように高速で走る。
並の魔術師であればこの動作だけで既に臆しているのではないのか、そう思えるほどの早さだった。
けれど先ほどの威圧感に臆さないシアと同様に彼もまた彼女の速さに臆す事は無かった。
変わらない表情でただただシアを見つめている。
「……そうやって余裕ぶっているつもりか、片腕の魔術師!!」
シアが叫ぶ。だがしかし返事は帰って来ない。
シアの殺気が目で見ているだけでも分かる程浮かんでくる。キレている、だなんて言うレベルじゃない。
そしてシアは振り上げるかのように剣を上に上げた後、闇夜を切り裂く光のように剣を振り下げた。
「終わりだ! 片腕の魔術師!!」
ザシュッッッッッ!!
肉が切れる音がしたかと思うと、鮮血が吹き飛ぶ。
私はシアが彼を切ったのだと確信した。
瞬時に血から腕で身を庇い、腕を下ろすと私は思わず目を見開いた。
「え……?」
斬られていたのは彼ではなく
シアだったのだ。
シアは斬られたらしい横腹を押さえながら、何とか流れている血を止めようとしていた。
そして瞬く内に倒れ、意識を失う。私はシアの元へと急いで駆け寄る。
幸い、意識はあった。安堵の息をつく。
一方で彼は先ほどと変わらない余裕そうな表情を見せながら自分の武器の大剣を出していた。
いつ抜き出した? どうやってシアの剣を受け止めた? 二つの疑問が頭を巡る。
恐ろしいと心からそう思えた。
「どうした……お前は戦わないのか?」
私を見ながら彼は微笑む。
言われるまでも無い。私はライフルを構えて目を瞑り、風を感じる。
私の魔法属性は「風」。このライフルの弾は私の魔力で創られている……つまり風属性の弾である。
風と共に弾を撃てばかなりの威力となる為、こうして目を瞑っている訳だ。
ヒュゥゥゥゥゥゥゥ……
——————今だ!!
聞こえる風の音でそう確信して、迷う事無く銃の引き金を引く。
弾は自分の目で確認出来ないほど速く風の威力をかなり纏っている弾となっていた。
よし……今回は大丈夫。そう自分に言い聞かせるように頷く。
「遅いな」
何っ!?
突然、聞きなれた声がして後ろを振り向く。
余裕そうに笑う微笑み、私の撃った弾を受け止めている手。
……どうして? 焦る鼓動が自分でも分かるくらいに聞こえる。冷や汗が流れ、目が大きく見開かれる。
「——————お前らに殺されるつもりは、生憎まだ無いんでね」
そう言いながら、剣が振り下ろされるのを見た後私は意識を失った。