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Re: 片腕の魔術師 ( No.11 )
日時: 2010/11/23 09:00
名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)

私は空を飛び、やがて暗闇に有る森に着いた。
暫くなら此処で休息もとれるか……そう思い其処へと降りる。

上着の右袖が風に揺れるのを少々おかしく思いながらその場へと座った。


「ふぅ……」

そして、時は進んだものだと確信する。
私が裏切り者から片腕の魔術師と呼ばれるようになってから早50年経った。
長寿を誇る魔術師は容姿こそ変わらないが、様々なものが変わったと思う。
シアも、真理も厄介になって来た。それにまだ「アレ」が現れない。
厄介なものだ。アレを探してからはもう三桁程の年月が経つと言うのに。
……まぁ、元々これくらいは覚悟していたからしょうがないだろう。そう納得して、溜息を着く。
すると突然肩を叩かれた。


「あの……貴方様は人の家で何をなさっているのですか?」

振り向くと其処に居たのは私よりいくらか小柄な少女だった。
グラデーションのかかった紫色の着物を着ていて怪訝そうにこちらを見つめている。
……家? 此処がか? そう思いふと森の方を見てみると先ほどは気付かなかったが確かに家があった。
しかも大きい。旅館を彷彿させるような大きな家だ。ふと怪訝そうな表情の少女をこちらも見つめてみる。
少女の二つに結われている艶やかな黒髪が風に揺れていた。
……どう返事をすれば良いものかと考えていると突然少女が驚きだす。


「貴方、右腕はどうなさったんですか!?」


ふと少女の目線を辿ってみると上着の右袖を見ている。
今さっき斬られた訳では無いがこれを何と説明すれば良いのか。
突然飛んで逃げるのも良いが、妙に罪悪感が沸く。
私が返答に困っているのをよそに少女は一人何かをブツブツ呟いている。
どうしたのかと思い声をかけてみた。


「あの、どうし———「とりあえず手当てをしましょう! このままでは危険です!!」

いや、だから違うって……そんな私の声もよそに少女は私を引っ張りながら走り出す。
何なんだこの少女は、と言うより誰だ? と思いつつとりあえず走っておく。
いくら戦いに勝った後とは言え、片腕が無い為疲労はいつも通常の倍になっていた。
休息を取らせてもらうのなら有り難く行為を受け取ろう。……と言う結論に至り、走っている訳だった。

暫く走っていると例の大きな館へと着く。
家だと少女は言っていたがこれを家だと呼べる人物は早々に居ないだろうと苦笑する。
この家を一言で言い表せば和風亭……だろうか。日本ならではの和を家にしたかのような感じだった。


「さぁ、早く入って下さい!」

半ば強引に押される感じで私は館の中へと入る。
中は温かくヒノキの香りがする。……和風亭と評したのもあながち間違いではなかったな。
そんな事を思いつつ少女に館の色々な部屋を案内されていた。