ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜アビリティ ワールド〜5話UP ( No.18 )
- 日時: 2010/11/26 19:11
- 名前: 遊太 (ID: U3CBWc3a)
第6話【奈央の推理】
「それじゃあ、まず今回の神隠し事件の不審な点を書くよ。」
奈央はそう言うと、チョークを持ち黒板に箇条書きで書き始めた。
それは、生徒会長である慎也にもらった資料と吹奏楽部の顧問である小金井の証言を元にしたものだ。
・消えた6名の生徒は全員が1年生
・更に、消えた生徒は全員が女子
・6名は友人関係であり、それぞれの部活の主要メンバー、或いはエース
・決まって休日である土曜日に消える
奈央は書き終えると、立ったまま呆然としているホタルを見る。
ホタルは奈央と目が合うと、何度か頷き黒板の前まで歩いて来た。
「これだけで、なんで吹奏楽部の人間が犯人と言い切れる?」
「忘れた?最初の犠牲者は吹奏楽部の七本音葉。七本さんは、吹奏楽部の1年エース。」
「……だから?」
ホタルは首を傾げ、奈央は説明を続けた。
「吹奏楽部は来月コンクールが控えている。女子ソフトボール部やバスケットボール部は、この間、県大会が終わったばかりだから何も支障はない。更に、どの部活も見ていれば分かったけど、雰囲気は暗く、誰もが落ち込んでいた。」
「あ!!」
ホタルはこの時、初めて気付いた。
吹奏楽部だけは練習を真面目にやり、どの部員も懸命に練習をしていた。
「私も今日知ったけど、吹奏楽部は人数が多い部活。その分、部活内で格差社会が生まれていてもおかしくはない。これは、明らかに吹奏楽部の何者かが起こした事件に間違いないよ。女子ソフトボール部とバスケットボール部を襲ったのは、カモフラージュに過ぎない。」
奈央の説明を聞き、ホタルも確信した。
簡単に解釈すればこういうことになる。
─吹奏楽部の何者かが、コンクールに出たいがために起こした事件─
「そうなると、これは神隠しじゃなくて拉致事件?」
「まぁ、そうなるよね。今日は帰ろう。もう遅いし。」
奈央は窓の外を見ながら言った。
夕日が空を真っ赤に染め、グラウンドで部活をしていた野球部も引き上げ始めている。
「じゃあ、私先に帰るね!!」
奈央はそう言うと、鞄を持って駆け足で教室から出て行った。
──────
ホタルも背伸びをして、帰ろうとしたが足を止めた。
夕日を見つめ、今日のことを振り返る。
奈央が転入してきて、生徒会に入り、神隠しの事件を追っている。
しかも、奈央は発火能力を持つ超能力者。
ホタルは大きなため息をつき、そっと微笑んだ。
「荒れた日だったけど、まさか自分と同じ超能力者がいるなんて……ね。」
ホタルは、鞄が置かれている自分の机を見る。
すると、鞄は空を舞い、ホタルの手元に飛んできた。
「帰るか。」
ホタルは笑顔で教室を出ると、自宅へと帰ったのだった。