ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blood band【オリキャラ募集中です】 ( No.22 )
- 日時: 2010/11/26 20:52
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
やって来たのは三年間高校に居る俺でも全く知らなかったブラスバンド部と言う部活の部室だった。
夏弥から聞いたところ、昔はかなり栄えていた部活だったらしいがとある理由があって廃部したらしい。
そして使われなくなったその部室を夏弥と夏弥の友人達が弁当を食べる時や昼休みに使っているようだ。
「一応僕らもそれぞれ楽器が吹けるんだ♪ ブラスバンド部に憧れてるのは伊達じゃないんだよ」
そう言いながら夏弥は長い楽器……えっと確か……トロンボーンとか言う楽器の吹きまねをした。
暫く歩いていると部室の前へと着いた。夏弥が鍵はかかっていないらしいその扉を開ける。
扉が開いて二人ほぼ同時に入ると、その部室には俺らを除き三人の人が居た。
俺が入って来るとその三人とも各々の反応をしてこちらへと近づいて来る。
「おぅ、客かー。っと、俺は木之元翠って言うんだ」
まずそう言ってやって来たのは俺より背の高い水色の長髪の男—木之元翠。
背丈はそこそこ背の高い俺から見ても大きく見える。夏弥と比べるとさらに大きくも見える。
ラッパを持ちながら俺にニヤッと笑いかけて中に入るよう促してきた。
一応確認で「新入部員じゃない」と言っておくと凄く笑われた。不愉快だ。
「あ……えっと、初めまして。僕は遠山風真」
そう言ってニコニコ笑いながら近づいてきたのは木之元より小さい、それでも大きい男—遠山風真。
穏やかそうと言うか親が優しそうなイメージがある。いや、決して皮肉じゃなくて。
気品溢れると言うか自然と上品と言うか、そう言う感じのイメージだった。
「……西森華雪」
名前だけ言ってきたドライそうな身長は夏弥より少々大きい眼鏡をかけた女—西森華雪。
金髪に水色の髪に緑っぽい黒髪の中で唯一日本人らしい焦げ茶色の髪に黒っぽい灰色の瞳。
ある意味この面子の中ではマトモな感じの外見をしていた。
そしてその三人の紹介が終わると同時に夏弥はその辺にかかってあったスーツの上着を着てこちらを見る。
何かと思うと先ほどの口角を吊り上げた奇妙と言うか不気味な表情で俺を見て、喋りだした。
「僕らはね、悩みを“消す”仕事をしてるんだ……君の悩みは親の虐待だよね? その悩みを消したい?」
ごくりと生唾を飲む。悩みを消したい、それは俺にとっては親を消したいという事。
コイツらに出来るのか? そう言う思いも半分あったが期待に賭けてみたいと言う気持ちもあった。
そんな思いを知っているのか知っていないのか夏弥はニヤニヤしながら俺の返答を待つ。
親を消したい。そして、それを出来ると言う奴らが居る。
その機会を無駄にはしたくない。だったら答えは一つ。
「勿論」
俺が簡潔に答えると夏弥以外の三人もニヤッと笑った。正直西森まで笑ったのには驚く。
そして笑ったのも束の間、三人ともスーツを着て各々の楽器を持つとこちらを見つめていた。
……今度は何を言われるんだ? そう思いつつ怪訝そうに三人をこちらを見つめてみる。
すると、その状況を壊すかのように夏弥が言った。
「じゃあ、契約成立だね♪ 君の悩みを消して見せるよ」
夏弥はこの上なく嬉しそうに微笑んで手を叩いた。そして俺からも嬉しさが溢れ出す。
消える、親が消える。ようやく苦しさから開放される。
……あぁ、良かった。と心からそう思った。