ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blood band【オリキャラ募集中です】 ( No.24 )
- 日時: 2010/11/26 21:20
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
そしてどんな魔術でも使うのかと思うと夏弥は普通のパイプ椅子を用意して此処に座るよう促した。
俺は頷いて素直にそこに座っていると夏弥達は椅子に座って、楽譜や自分らの椅子などを準備している。
……おいおい、何で普通の演奏会っぽくなってるんだ? 俺は思わず眉をしかめた。
まぁ、とりあえず黙ってれば良いだろうと思い特に何も話さずそのまま待っていた。
そして楽譜を出すなどの作業はすぐに終わっていて夏弥が今度は立ち上がって話し始める。
「今から僕らの独特の方法で悩みを消す。演奏中、君は存在しない事になっている。まぁ、最後の最後だけちょっと心の繋がりを持てるけどね……」
心の繋がり? ……まぁ、どうでも良いか。
夏弥はそれを話し終えると椅子に座り、楽器を構える。
俺はまた生唾をごくりと飲み込んだ。遂に、遂に親が消える……悩みが消えるんだ。
自然と心臓が鳴り始めるのが分かる。手汗を掻いているのすら分かる。
——————♪
ふと、ラッパの高くて澄んだ感じの音と共に演奏が始まった。自然と引き込まれる曲だ。
———あれ? 気付けば夏弥達が段々霧に見えなくなる様にぼやけて行く。
だけど夏弥達の流しているメロディーだけはハッキリと耳に聞こえた。
そして視界が段々ぼやけて最終的に何故か俺の家が映り、玄関、居間……と進んでゆく内に
——————親の居る部屋が、視界へと移る。
煙草をふてぶてしく吸っているその様子は、見ているだけで殴りたくなる気持ちに襲われる。
普段は殴られているが、余裕さえあればいつだって殴りたいものだった。
……そして親がこちらを振り向く。
「!!」
ドキッ、と言う感じに心臓が高鳴った。ヤバい……殴られるか?
しかしこの心配は色々な意味で不発に終わった。親はすぐにこちらを見なくなった。
(あぁ……今の俺は存在が無いのか)
ふと夏弥に言われた事を思い出しつつ苦笑する。いつも怯えている親は姿のみ見ればただの人間。
……そしてもうじき“消える”と言うのに偉そうに煙草を吸っている有様。おかしいくらいだった。
——————♪
ラッパの、今度は低く重い音が聞こえた。何かを浮かび上がらせるような深く重い音。
そしてその音と共に親が——————苦しみだした。
「ぐッ……ごはぁっ……」
苦しそうに、全てを吐き出したいとでも言う風に口を大きく開けて首を腕で押さえている。
目は先ほどのやる気の無さそうな気だるいものでは無く、恐ろしいと語っている怖がっている瞳。
音が大きくなって行くたびにますます親が苦しみだしているのが目に見えた。
ザマぁ見ろ。俺は散々それだけ苦しんだんだ。
俺は自分でも分かるほど冷たい目で親を見下ろしている。苦しそうな様子を助けようともしない。
「ダれがぁッ……助ゲて……ぐれっ!!」
血を吹き出し、畳に血の水溜りを作った親は苦しそうに蠢きながら必死に手を伸ばしている。
そんな様子すらただただ見ているだけの自分に最初は恐ろしくも思えたが段々普通に思う。
……こうまでしないと、罪は分からないのか。
「悪ガっタ……ぐホぉッ……しっ、し、詩……怨」
パン、と俺を叩いたときのように乾いた音がしたかと思うと親は突然破裂して砂へと変貌する。
あぁ、あんな馬鹿でも最後の最後はずっと嫌いだった息子を呼ぶものなのか。
そんな事を思いながら、その一部始終を見続けた。
見るだけでおぞましい映像だったが、何とか吐き気を堪えながら直視していた。
—————————詩怨……
深く重い声が聞こえる。
誰の声なのか、分からない。