ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blood band【オリキャラ募集中です】 ( No.26 )
- 日時: 2010/11/27 10:20
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
誰だ……?
いつも瞳孔が開き気味な紅い自分の瞳をさらに大きく開かせて、周りを見る。
けれど低い声の正体は全く見つからない。……誰なんだ? 俺を呼んだのは誰だ?
自問自答。それを何回も繰り返して辺りをぐるぐる見回す。
「誰、だよ……」
そう言ったのを境に突然俺の心臓が大きく鳴った。
ドクン、とゆっくりとしかし大きく鳴る心臓に思わず嫌悪感を催し、その場に跪いた。
胸を手で服に皺が出るほど強く抑える。それでも心臓がゆっくり鳴るのは止まらない。
頬の内側の肉から血が出そうな程強く歯を噛み締める。苦しい、苦しい、苦しい、苦しい……
何だよ、後悔しろとでも言ってんのか? ふざけんな、俺は後悔なんかしない。絶対にしない。
“へぇーっ……君、後悔しないんだぁ”
夏弥の声が聞こえた。最初に会った時のような、今思うと何処か俺を避けているような声。
けれど夏弥が本当に俺を避けているだなんてどうでも良い。声の真偽などどうでも良かった。
後悔なんてしない。これが正しい。親の存在が元々“消えて”居る事が正しい。
そもそも親が居る事自体間違っていたんだ……そう自分に言い聞かせるように心の中で言った。
夏弥の笑っている声が聞こえた。けれど、それもまたどうでも良かった。
「……?」
ふと、突然に心臓の嫌悪感が消えた。フッと言う擬音の着きそうなほど本当に自然に。
あまりに突然で驚いた。けれど一応立ち上がる。夏弥の笑い声まで消えていた。
そして何もせずに立っていると突然眩い光が視界に入ってきて俺は目を閉じる。
「うわっ……!」
そう叫んだ瞬間目を閉じても分かる光と共に意識が徐々に途切れてきた。
……何だよ、俺死ぬのか? いや、違うよな……
そんな事を意識が途切れる前に考えていた、気がする。
瞼の内側からも見えていた光が徐々に消えてきて、完全に真っ暗になった。
「…………あれ?」
次、目を覚ました瞬間目に入ったのは学校でもブラスバンド部の元部室でも何でもない。
俺の家だった。
……おいおい、まさか全部夢だったって言うのか? そんな嫌な考えが頭をよぎる。
けれど夏弥は悩みは消えると言っていた。じゃあ親は居ないのか?
そう思って、とりあえずさっき演奏中に見た。親の部屋へと行って見る。仕事をしていないので多分居る。
けれど俺は驚く光景を目の当たりにした。
親が居ない。
それと同じく血の水溜りも、砂も無い。
親の居た証拠、存在が完全に“消えて”いたのだ。
本当に親が消えたのか? 純粋な驚きが頭を回る。これはまた夢ではないのかと何かが警告する。
すると俺の家の近所の人が何かを話していた。自然と聞こえた為、特に耳を澄ます事無く聞いていた。
「可愛そうよねぇ……詩怨君」
「そうよね、両親を亡くしてもう二年も経っているのよね」
……両親。母も父も死んでいる、事になっている。本当に親が消えていた。
なのに何故か純粋に喜べなかった。もう虐待されないのに……どうして?
良く分からない喪失感が俺の中を巡った。この気持ちは一体何なんだ?