ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Blood band【オリキャラ募集中です】 ( No.39 )
日時: 2010/11/28 13:08
名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)

「いよーっす……って、あれ? お前今回の依頼主? あ、俺木之元翠って言うんだ」


入るなり、僕にそう声をかけてきたのは染めていないと言う驚くほど綺麗な水色の髪の男……木之元翠。

見事に自分の自己紹介まで終えて下さった木之元さんは聞く限り大学生らしい。

僕も軽く自己紹介をして、依頼主だと言っておいた。否定するとまた面倒な気がしたので。

すると僕が入って来ても特に我関せず、と言う感じに読書をしていた少女と目が合った。

黒髪に灰色の瞳。髪と瞳が反対な容姿だった。あくまで僕の髪色は白色だったけど。


「西森華雪。……依頼は?」


名前だけ簡潔に伝えられると僕は特に戸惑うこと無く全員に聞こえるように言った。

何て言うかは戸惑ったけど、さっき遠山が言っていた風に言えば多分良いだろう。そう思い、口を開く。


「……兄の事で、悩んでる」


僕がそう言い終えると、夏弥が周りを見回してから口角を吊り上げて、やや奇妙に微笑んだ。

周りから見れば至って普通な微笑みだったのかもしれないが僕にとっては何故か奇妙に見えた。

まぁ、それは特に気にせずそのままにしておくと夏弥が何処からとも無く楽器ケース(らしき物)を取り出す。

そして、僕にこう告げた。


「じゃあ早速依頼を承るね♪ 君の兄を“消し”ちゃえば良いんでしょ?」


あっさりとそう告げられ、けれどそれでも僕は頷いた。

そう頷いたと同時に夏弥以外の三人も楽器ケースを取り出して他に譜面台やら何やらを出している。

……兄を消す。けれどそれは出来ない事だった。

しかし、夏弥達はそれが出来るとあっさりと言った。疑いたいが、微妙に疑えない。

もしそれが本当だったら僕の努力が周りに認められる。だったらその可能性を信じたいと思った。

犯罪かもしれない。けれど僕だって散々苦労した。だったら良い。それで良い。

そんな僕の心情など何のその、と言う風に夏弥達は準備をしていた。

椅子が置いてあったので適当に座って待っていると夏弥がパン、と自分の手を叩く。


「はい。じゃあこれから依頼を始めるね。それで依頼中に君は存在しない事になってるけど、まぁ気にしないでね。一応、最後に心の繋がりはあるけど……」


存在しない、ややファンタジーチックな事を言われたが一応頭の中に留めておいて頷く。

今の自分の心はこれから兄が“消えて”しまう事への奇妙な開放感で埋まっていた。

自分の努力が、長い間兄のせいで認められなかった努力が、今認められる。

……自虐的な笑みが浮かんでいるのが分かる。けれど、収まらない。


気付くと、西森、と言う女子の吹いている楽器が低くそれでいて鋭い音が鳴り始めた。

それと同時に僕の意識が段々と薄れてきた。けれど、不思議と不信感は抱かなかった。





そして気付くと、中間テストが終わった後の時が目に映った。