ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blood band【オリキャラ募集中です】 ( No.42 )
- 日時: 2010/11/28 14:16
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
あの時、僕はもの凄く必死で勉強して数学の一点ミス以外は全部百点を取った。
今度こそ努力を認めてもらいたい、そう思ってテストの答案用紙を親に見せた。
けれど、親は「お兄ちゃんは全教科百点だったわよ。もっと勉強なさい」と言ってきた。
また、兄。いつも兄。全教科百点取らないと褒められないのか? とテスト用紙を破り捨てた覚えがある。
(何で態々その記憶を……)
溜息を着く。けれど、何故か僕の記憶なのに僕はその記憶を“遠くから見ている”と言う感じになっている。
そして僕がテストの答案用紙を親に渡しているのを、僕が見ていた。
また、兄の方が偉いとでも言われるのか。
しかし、返って来たのは意外な微笑みととんでもない発言だった。
「あら、凄いわね! 良く勉強した甲斐があったわね!!」
良く勉強したって……努力を認められた!? 今までに一度も無かったのに!?
いや、そうか。兄を“消して”いるんだ……。
自分の驚きを納得させながら心の中に出来た充実感を不思議に思う。
次に見た記憶はマラソン大会。僕は男子の中で二位。けれど前より順位が上がっていて親に話した。
けれど、その時も親は「お兄ちゃんは一位だったのよ。貴方も見習いなさいよ?」と言っていた。
また、兄の方がと言われて心底兄に腹が立った。学校でも家でも勉強もして走りもしたのに、努力を認められない。
またその時の僕は親にそれを報告して……今度も嬉しそうな親の微笑みと褒め言葉が返ってくる。
「そうなの!? 散々走ってたものね〜……」
自然と笑みが出てくるのが、自分でも分かった。微笑みが溢れてくる。止まらない。
兄さえ居なければこんな気持ちを味わえていたのか……
嬉しいと自然と心から思えた。自虐的な笑みがどこかへと飛んで行く気さえする。
その後もテスト、体育祭、文化祭……様々な行事で“自分”が褒められていた。
そして段々と兄の記憶は消えてゆき、小学生の記憶までゆくと、既に兄は“消えて”いる。
自然と……空気のように薄れる。兄が消え、僕が認められてゆく。
そして、記憶を見終わって段々辺りがぼやけてゆくのが分かった。目が覚めるらしい。
目が覚めれば、また僕が認められる、兄の“消えた”世界で目覚められるのか。
自分でも分かるほど、微笑んだ。
「待って——————……」
しかし、それをぶち壊すかのように今まで僕を散々と苦しめてきた兄が突然現れ僕の手を掴む。
もう、消えるのに何を待てと言うんだ。今度も自分で分かるほど、顔を顰めていた。