ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真空パック〜参照200&返信100突破で感動中!!〜 ( No.109 )
- 日時: 2011/01/02 13:51
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: 明けましておめでとう御座います、今年も宜しくお願いします!!
3パックめ◆君の手を取って◆
「さーて着いたわ、此処がアスキ街ね!!」
「いやいや、“ついたわ”って もうさいしょっからあすきだし」
斜め45度からのツッコミを入れるショタ———もといヴェアナ。
「うっさいわねーどうでもいいのそんなこと!!
それより早く彼らのところに行かなくちゃいけないでしょー?」
「うむ、すっかり忘れていた。
しかし何処を見てもこの街は残骸しか無いと言っても過言じゃないな」
さらっと酷いことを言いつつ明日来街———別名スラム街を見渡すフィックル。そんなフィックルの言葉が聞こえているのかいないのか、ヴェアナがまた何かを取って喰べようとしていた。
「ヴェ——————ア——————ナ——————!! あんったねー、どれだけ注意されれば気が済むのよ!? もう頼むから喰べないで!」
「えぇっ、だってしょくりょうないし はらへるんだし」
———だからって喰うな!!
———毒入ってたりしたらどうすんだ!
「アンタは本当に迷惑の掛かるコだわ……」
呆れながら溜息を吐き、ヴェアナに袋を渡すレーナ。
「これで何か買ってきなさい。そこら辺に何か店があった筈だから」
スラム街に店なんてあるのか、というツッコミは無しで。
「レーナ、いつの間に金を…?」
確かおれ達は文無しでローヴェヴァールを出てきた筈だが、と続けるフィックル。
「あーアレ?スったのよ」
———いやいやいやいやまず何処で覚えたそんな技術?
頭の中で彼女にツッコミながらフィックルは「そうなのか」と言っていた。
「ねぇフィックル?王はまだアタシ達のことをお許しになっていないのかしら」
「“叫び”を犯したからな、こんな旅くらいでお許しになられる筈は無い」
水道のある汚い公園のベンチに座り(レーナはフィックルの膝の上に座っているが)、2人にしか否、3人にしか解らない会話をしていた。
「正直言うとね、アタシあのことあんまり覚えて無いのよ。
覚えてるのはそう……ヴ ェ ア ナ が 王 を 斬 っ た 瞬 間。
まぁアレで王は死ななかったけどねー」
トン、とフィックルの膝から降り、水道の水を出して地面を綺麗にするレーナ。
「ヴェアナもヴェアナだ。よく王を斬れたもんだな。おれには真似出来ない」
「あのコは人を殺すことに躊躇しないから。 相手が王であっても、罪無き凡人だとしても、誰でも殺そうと思えば刃を向ける。
勿論、自分にも」
哀しい表情をしながら、薄汚れた空を見上げるレーナ。
公園の時計は昼の2時48分を指しており、そろそろおやつの時間だ、と子供達が何処かへ向かっている時間だった。
「レーナ、フィックル、かってきたじょ、しょくりょう!!」
トタトタと帰って行く子供に紛れながらこちらへ向かって走ってくるヴェアナ。手にはリンゴが4つ握られている。
「おそくなってすまない、みんなのぶんもかってきたじょ!」
にぱっと向日葵が咲く瞬間のような笑顔で笑い、2人にリンゴを渡すヴェアナ。それからちょこん、とフィックルの隣に腰掛けてリンゴを食べ始める。
「食べる前には手を洗いなさいヴェアナ。ただでさえアナタは汚いもの触ってるんだから」
怒ったような口振りでヴェアナの手を引っ張り、水道台まで連れて行くレーナ。
「綺麗な水が出るかどうか、さっき確認しておいたのよ。
大丈夫だったから、どうぞ洗って」
———成る程、さっきのはただ単に水を撒いていたのではなく、綺麗な水が出るか確認していたのか。
微笑ましいといった目でレーナとヴェアナを見るフィックル。
「ところでヴェアナ、なんでリンゴ4つも買ってきたの?」
真っ赤に熟したリンゴを2つ大事そうに抱えているヴェアナに訊くレーナ。
「んー? かったんじゃないじょ、もらったんだじょ。
おみせのひとが、“ぼうやえらいね、おかいもの?”っていってきて、おまけにくれたんだじょ」
———やっぱり子供って得するのね。
ひょい、とリンゴを1つヴェアナの腕の中から取り上げて
「ほーれヴェアナ、取れるもんなら取ってみなさい」
いじめるのであった。
色んな腹癒せに任せて。