ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真空パック ( No.15 )
- 日時: 2010/12/10 21:54
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
この女を助けるのにどうしてこの狐はこの女を“殺そうと”しているんだ?
龍緋がそう思うのは当たり前の事実で。
「どうなされました。早く“コレ”を『姫』に」
「無理。
人殺しなんてやりたくない」
記憶喪失な龍緋だが、多少の当たり前の知識等は残っているようだ。だから狐の持つ“ソレ”————ナイフを見て、彼女を自分が殺してしまうのではないのかと思ったのだろう。しかし
「いえ、『姫』を殺すわけではありません。これは、『姫』の身体にまとわりついている“もう1つの結界”を壊すものです。ですから、貴方様人間でなければ出来ない事————さぁ、やってくれますよね?」
そんな長ったらしい説明が狐の口から紡ぎだされる。
「……めんど…。
貸して。
でも、失敗したって知らないからな」
そう言ってから龍緋は、狐の手から、しゃがんで、ナイフを半ば奪い取るように取る。
「思いっきり?」「はい」「1回だけ?」「当たり前です」
「……ああああぁぁぁぁぁっ!!!!」
『ガシャンンンンッッ……——————!!!!』
「————————っ!」
ナイフを振りかざして叫ぶ龍緋。
そしてその降り下ろされたナイフによって割れる結界。
そしてその後に声にならぬ叫び声を上げたのは彼女だった。
「貴方は誰?何?私の、何?何処から来たの?名前は?」
「……目を開けた瞬間に質問するってどれだけ君は人を困らせたいの」
「?私、困らせてない。貴方が勝手に困ってるだけ」
……確かに間違ってはいないが。
「……って、いつの間にかあの物体も無くなってる」
ぐるりと辺りを見回す龍緋。そして目の留まった先には、由芽の姿があった。ニコニコと笑っている。
「うむ。やはりやれば出来るな龍緋」
「馴れ馴れしく名前で呼ぶな。まだ自分でも呼んでないのに」
「そんなとこで意地張らんくても」
そう言ってから、結界が消えた時から何処へと消えた狐が言っていた、『姫』の肩に手を置く。
「貴様も4年間…だったっけか?大変だったな。ずっと閉じ込められっぱなしでな」
その手を地味に払い除けながら、彼女は言った。
「そう、だから私は彼と一緒に旅に出るの。私を置き去りにしたあの人のこと、知りに行く為に。そうしたら、好都合。貴方も、私も、彼も」
払い除けられた手を軽く振り回しながら由芽がまた喋り出す。
「ならば簡単に自己紹介でもしてくれんか?旅するメンバーがやっと集まったところだからな。
じゃぁまず俺からいくぞ。
俺の名は儚伊 由芽。決して『儚い夢』ではないからな」
「オレは…えっと、すの…?
須野江 龍緋…だった気がする」
「私は風倉 亜呂江。
外見とかはまぁ、気にしないで」
———本当に、髪の毛長いな。
———邪魔じゃないのか。
「よしじゃぁ自己紹介が終わったところで、出発だ!用意は良いか?」
「OK!!」「何処に行くってんだよ」
「何処へって、旅なんだから行く宛てなぞ無い!準備は良いな!!!?」
「OK!!!」「どうぞ御勝手に」
◆プロローグ◆ 終わり