ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 真空パック〜参照400突破…だ…と!!〜 ( No.159 )
日時: 2011/01/09 10:26
名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
参照: 別れが無い出会いなど無い←何処かで聞いたことあるような…?

                           &




———あれ、此処は何処だろう。
———薄暗いけど…ギリギリ見える。

「やーあ起きたかい亜呂江ちゃん?」
「ッ」

ガシャンガシャンとガラスを割るような音を立てながらその博士が彼女に歩み寄って来た。にこにこな笑顔で、夏だというのに白衣の下に真っ黒なスーツという暑苦しい姿。さっきと違って髪の毛はぼさぼさで、眼鏡も掛けていない。

「……私をどうするつもり?何をするの?どうして私なの?」

次々と湧きだす疑問のシャワー。相手を睨み付けながらも彼女は冷静かつ冷酷な表情で訊いた。彼女がいるのは一言で言えば牢屋。檻が付いているし、窓もなければドアも無い。あるのは彼女が今座っているベッドと、血の付着した椅子、そして血、血、血だまり。

「質問が多いね君は。いいよ、答えてあげる。
君を勿論実験台にするつもりさ。勿論隣にいる君の妹さんもね」
「亜利江は関係無いでしょ…!?」

狂っているとはいえ大事な、掛け替えのない存在を抱き締める。触るな、というように。
「まぁまぁいいから聞きなよ。んーとね、君達は『カースト・ツインズ』っていってね、傍にいると厖大な力を発揮してその人達を呪い殺してしまうんだ。それを抑える為にね、君とその子を合体させるんだよ」

———合体…?
———私と亜利江を一緒にする、てことでしょ?
色んな疑問が湧いたが、博士が続ける。

「合体させてしまえばそんな心配は無くなるからね、て君のお母さんも言ってたよー。じゃー痛いけど我慢して」
「待ってよ!!
お母さんが私を捨てようとしてた理由って何?言ってたんでしょ、聞いてたんでしょ!?なら教えて」

叫ぶ。心が爆発してしまわぬよう。限界突破だから。

だがそんな亜呂江を無視し、
「そうそう言い忘れてたけど…君の『能力』、それも封印されることになるから」
そう言いながらガチャンと鍵を開け、亜呂江を片手で持ち上げ、亜利江をおんぶする博士。

———お母さん、何で?
———理由は、何?
———私が『カースト・ツインズ』だから?
———呪われたくないから?

ぽろぽろと、彼女の頬を突如伝う透明な水。
それが博士の手にポツン、と落ちる。

「君は今日、失うものが多いかな。
うん、盛大に泣きなよ。それももうなくなっちゃうから」
「っ…ぅああああ、ふぁっ…」

最初は我慢していた哀しみが溢れ出て、止まらない。
知ってる、これは“涙”っていうもの。感動したときに出る、不思議な液体。

これが最初で最後の、私の涙。もう流すことは2度と無い。
顔が熱くて周りが歪んで見える。もう全部何か解らなくなるくらいのその雫を流して、乾くまで。いくら痛くても、いくら哀しくても、いくら嬉しくても、私の体内に水分は無いんだろう、次目覚める時。

「うえええええええぇぇぇえええええええええええん!!!っく、ふ、あああああああ!!!」

恥ずかしさも忘れるくらいの叫びを上げて、子供のように素直に泣いて。



結局呪われてるのは、私なんだろうね。

素直に泣いてる時にお礼言っておくよ。
お母さんお父さん、私達が生まれたのは貴方達が巡り合って愛し合った結果、おかげ。
亜利江、私の双子として、これまでも今からも離れることは無い。
だけどこれまでの私にはもう戻らない、戻れない。だから、


「皆さん、さよなら」