ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真空パック ( No.20 )
- 日時: 2010/12/16 21:39
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
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「おいバカ(由芽)、大丈夫か」
ミッション屋の屋台の奥———つまりミッション屋のおじちゃんの家、そこに龍緋達はいた。
「全く、オレの真似しようとするからだ。あんたみたいなガキにあんなこと出来るわけ無いだろ」
「いっいや違う、違うんだぞ龍緋!?アレはな、俺の歩ける水質ではなかったというだけで…!!」
そんな変な言い訳をしている由芽を差し置いて、龍緋は亜呂江に向き直った。
「ところであんたはさ、亜呂江。その髪の毛鬱陶しいと思わないの、自分で。オレは鬱陶しくてたまらないんだけど」
と、地面スレスレ(と言っても今は椅子に座っているので付いているのだが)の亜呂江の髪の毛をまじまじと見つめながら言った。
「別に鬱陶しくなんてない。貴方が思っていても、当の私が鬱陶しくないから大丈夫」
そんな返事をして、亜呂江はおじちゃんの部屋に飾ってある沢山の絵———風景画を見つめていた。
龍緋は椅子から立ち上がり、真っ白な病院のような壁にもたれ掛かる。
「この家さ、コムリッサ村の伝統的な家じゃないんだよな」
いきなりそんなことを呟く由芽。濡れた身体をベッドから起こして、毛皮のようなマットが敷いてある床にトンと立つ。
「コムリッサ村の伝統的な家といえば、ログハウス!!憧れるな、アレは。この家もそうだったらよかったのに」
「あんた助けてもらってるだけでも感謝したいと思わないのか」
夢を語る少女のような瞳でこの村の伝統的な家を紹介する由芽に当たり前の言葉が龍緋から告げられる。
「いやぁ、分かってるよ。
まぁ俺は色んな国を巡ってるわけだからさ、ログハウスに入ったことくらいあるんだぞ☆」
「へーそうなん」
「龍緋お前、俺に対しての言葉遣いが妙に荒れてないか?そんなに俺が嫌いなのか?」
「うん嫌い。だからオレに喋り掛けないで。あとオレと一緒な一人称使わないで、気色悪い」
記憶喪失のくせに、よくここまで罵倒の言葉が出るものだ、主人公。
「ねぇ龍」
「オレはあんたにあだ名で呼んでなんて言ってない筈だけど」
「私が呼びたいから呼んでるの。
それで、“コレ”は何?」
あくまでもマイペース、悪く言えば自己中心的な亜呂江がしゃがんで指さす塊。龍緋と由芽がその両脇からそれを見る。
「四肢じゃないのか?」「どう考えてもそうだろ「四肢って人の手足?」「おう、そうだぞ」
———何でこんなものが…?
———もしかして、あのミッション屋の店主が…?
「亜呂江、由芽、ちょっとどいて」
突然の龍緋の命令に、?マークを頭上に浮かべる亜呂江と由芽。そんな2人を半ばどかすようにして、後ろへと押し倒した。それからその四肢をいつもの無表情でどかしていく。血の臭いや明らか腐っているかのような臭いを放つ四肢を、顔色1つ変えずに。
「おっ?」「…穴?」
見ると、いつの間にか四肢はテーブルの上にあり、それがあった場所にはぽっかりと人1人入れるくらいのスペースの穴があった。というか…既に入っている。
「よ、良かったぁ、助かりました、ありがとうございますっ」
出てきたのは、血のついたローブを身にまとった20歳ほどの青年。痩せこけて今にも死にそうである。
「貴方誰?何?大丈夫なの?その血は貴方の血?」
「亜呂江、質問は1つずつしていけ」
そんなツッコミをしながらも、龍緋は青年に向き直って言う。
「で、あんたは一体誰なの」