ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 真空パック〜参照900突破で感激です〜 ( No.293 )
日時: 2011/03/26 08:43
名前: 緑紫 (ID: rb3ZQ5pX)
参照: 春休みだね、嬉しくなんてないけど。

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「うーむ、そろそろリアルちゃんはあの2人のところに着いてるかなぁ?」
笑顔で笑う男に横で、不機嫌な、というか無表情で立つ女。
「稲富さん、仕事して」「実の夫に向かって名前+さんってちょっとおかしいんじゃないかな依世ちゃん?」
休憩室のような場所で呑気にコーヒーを飲みながら妻に言う。
「恥ずかしい」
少し俯き加減に呟く彼女をただ普通に可愛い、と思う。
「それより依世ちゃん、因幡は死んじゃったんだけど、これからどうするの?」「どうする、とは」
———多分この光景、普通の人だったら医師と看護師が屯してるふうにしか見えないんだろうなぁ。
———夫婦なのに。
そんなことを考えながら、
「子供だってば。 依世ちゃん生まないの「もう沢山。痛いから」
彼の言葉を遮って言う依世。

「それに———稲富さん似の人なんてもうこりごりだから」



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彼女の名は、確かリアル。
碑稲城 因幡さんの助手的な人であった。

「リアルさん…!? 久し振りですね」
笑顔で言い、軽く手を振る。
が、リアルは彼女の予想外の反応であった。
「……………失礼ですが、貴方達は、どちら様でしょう? 私はただ先生に言われて貴方方2人を迎えに来ただけなのですが」
夢感情な声でリアルは亜呂江に問うた。

「待て。 あんたは本当にオレ達のことを知らない———いや、覚えていないのか?」
不審に思ったのか龍緋が尋ねる。
「先生曰く、私は1度破壊された模様。 ですから造りかえられる前の記憶は失っているとのことです」
突然の大告白に、目を丸くして言葉を発せない。
「私の名前はリアルです。 私を造ってくれた人物は碑稲城 稲富。
それしか覚えていない」
碑稲城 稲富、という言葉に過敏に反応する亜呂江を気にせず、リアルは続ける。
「とりあえず、私に着いてきて下さい」

———何だろう、嫌なト間がする。
曇った表情で、亜呂江はそう思う。
———それに…それに、リアルさんが壊されたっていうのなら、因幡さんは…?
———因幡さんは、一体………?



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表に出たいという感情の波が押し寄せる。
亜呂江は一体今から何処に行くのか。
もしも亜呂江が危険な目に遭いそうであれば、自分が無理矢理表に出て亜呂江を傷付けようとした人物を破壊しなければいけない。
あの実験で、自分と亜呂江は合体した。
それは本当に今考えれば、自分と亜呂江に必要な実験であったのか。

「私と亜呂江は双子だよ…? それなのに、それなのにこんなのは最低だよ。 碑稲城 稲富………、絶対に復讐してやる」
亜呂江は自分の大切なものだ。
確かに自分は彼女と一緒になりたおとは願っていたが、こんな形で、しかも他人に勝手にされるのは気に食わない。

———嫌いだ、みんなみんな。

「亜呂江に触れないで。 亜呂江は…亜呂江は私のものなんだから」
彼女の瞳は、珍しく光が宿っている。
しかしその光は、明るい光なんかじゃないのだ。
復讐の、憎しみの感情が入った光であった。