ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真空パック〜9話目突入!!〜 ( No.297 )
- 日時: 2011/04/02 10:21
- 名前: 緑紫 (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: 昨日投稿しようとしたら間違えて戻るボタン押した件。←
9パックめ◆真実の愛は零れ落ちる◆
長い長い坂を上りきって、龍緋は伸びをしながら言う。
「もうこの街とはお別れか。 亜呂江…何か色々、ごめんな」
彼女の家を物凄い滅茶苦茶にしたことを気に病んでいるのだろう。
「いいよ、大丈夫。 それに私は家なんかなくても、龍と一緒にいられればいいの」
新たに買ったワンピースの裾を翻して、答える亜呂江。
「………それより、リアルさん。 碑稲城 稲富は一体何処にいるんですか?」
少し哀しげな表情で問う。
「レゾメアンという国の中の、ヒュークリットという街の小さな病院にいます」
———あの人に会ったら、1発殴らせてもらわないと気が済まない。
———覚悟しててね、『お父さん』。
勿論、彼、碑稲城 稲富は亜呂江達の父親ではない。
「さて———では行きましょうか。 あの森を進めば近道です」
「ただ、今現在厄介事が起きているそうですが、ね」
&
『ちょっと! そんなところで寝ていたら通行人の邪魔なんだけど!』
ぺしぺしぺし
小さな奇妙な格好———薄ピンク色の大きな羽と、真っ白なヘソ出しコスチューム、薄茶色のサンダルに、肩甲骨辺りまである水色の外はねしている髪型———をした少女が、薄暗い森の中で倒れているキルメリアを起こす。
「……誰、だ…」
『あたしはサンダーミスト=ウィンディ』『仮名だけどね』
偉そうに腰に手をあて、笑う彼女。
何故だかスケッチブックで筆談をしているのだが、キルメリアは敢えてツッコミを入れないでおいた。
「…というか、何だその格好は? 今流行りのコスピレか…?」『それを言うならコスプレね』
ツッコミした筈が逆につっこまれてしまった。
『ていうか、貴方に言われたくないわよ、そんなボロっボロの赤いドレス着てる人にさぁ!!』「これは訳があってボロボロなんだ」
勝手に人をゴミ好き人間みたいに言うな、とつっこんでから、キルメリアは此処でやっと、自分のいる場所が森の中だよ気付く。
「私…何で森の中なんかにいるんだ?」『こっちが訊きたいわよ!』
羽を羽ばたかせ、木の枝にちょこんと座るサンダーミスト。 どうやらあの羽はフェイクではなく本当に飛べるものらしい。
———こいつは妖精か何かか?
そんな現実にはありえない言葉が浮かんだが、きっと何か悪い夢を見ているに違いない、そうキルメリアは解釈した。
『あ、貴方の名前は?』「ルーク・キルメリアだ。 とは言ってもキルメリアが下の名前なんだがな。 色々事情があって」
立ち上がってドレスに付いた土を軽く払い、答える。
『へぇ〜、キルメリアっていうんだ』『可愛い名前だね』
木の枝から飛び降り、スケッチブックに書かれた文字をキルメリアに見せる。
『それじゃあキルメリア。 名前も教えてもらったことだし、この森を抜けましょっか』
『今この森は、大変なことになっているから』