ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真空パック ( No.32 )
- 日時: 2010/12/26 17:39
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: 気軽に呼びタメOKよ←
「由芽の国?あんたが住めるような国なんてあったのか」
「うっさいお前。そろそろ俺の本気で倒しちゃうぞ☆」
———「☆」が付いてるから怒ってるように見えないんだけど。
「あーうんごめん。で、あんたが住んでた国って何処」
軽く謝り、テーブルの上の四肢をボキボキ折ながら疑問を口にする龍緋。
「んーと最近でな。確か俺が7歳の頃———つまり5年前だ」
「前置きいいからさっさと話せ」
四肢を穴の中に押し込みながら突っ込む龍緋。
「ったくお前は…。
あと、そんな汚いことをするな、黴菌が入るぞ」
そんな由芽の言葉を聞いてか水道で手を洗い、また元の位置に戻って椅子に座りこむ龍緋。
「『レグ・ナ・バラード』という国———というか城下町に住んでいたんだが…」
「城下町じゃなくて国の話をしろっての」
今しようと思っていたところだ、というふうにしかめっ面で龍緋を睨む由芽。
「で、その国の名は『フィナーレ王国』といって———」
「ッ…!!?」
その国名を聞いた瞬間、龍緋がぴくりと身体を震わせる。
「———記憶の…破片が…」
「「「記憶の破片?」」」
そんな龍緋の言葉に対し、3人は全く理解不能という返答。
「あぁ、そうか。思い出した、1つ。オレはその国の、国王だったんだ」
「は!!?嘘だろ!?変なデタラメ———」
「何でオレがわざわざ嘘なんざ吐かなきゃいけないんだよ。
その国が崩壊した日は12月25日の23時———。丁度オレが、記 憶 を 捨 て た 日 だ 。
国王が記憶を捨てたから、国は消滅した。それだけの話だ。それでオレは吹き飛ばされて———あの森に偶然、辿り着いた」
「何を言っている!!?そんな都合の良い話があるわけ———
!!?」
突然由芽が話を中断し、ドアの方を見る。薄茶色の、太陽の光が差し込んでいるドアの方を。
「今の話、全て訊かせてもらった」
リンの店を奪い、それだけでなくリンの仲間の命までもを奪った、言わば強盗。
その強盗が、1拍間を置いてから言葉を続ける。
「成程、その男がフィナーレの王…。しかしなんと勿体無い、記憶を捨てるとは。記憶を持っている状態の貴様を売れば、高く売れるのによぉ」
———ああ、そう。
———確かあの時も、オレはこういうこと言われたから、捨てたんだ、記憶。
「あげないよ」
突然目の前に亜呂江が立ちはだかる。龍緋を守るような形で。
「あげないから。龍は、私のものなの、私が守るの」
「おい待て、いつオレが亜呂江のものになった」
そんなツッコミは全員が無視して。
「ハッ、小娘に守られるなんざ、ガキはガキだな、やっぱ」
「じじいに言われたかない」
「龍緋、じじいはどうかと思うぞ。せめてハゲオヤジにしておけ」
「じじいのほうが短いからいい」
「待て、おれの意見を完全無視だろお前ら」
強盗に突っ込まれる皆さん。あんたらスキありすぎだろ。
そんな強盗に龍緋は亜呂江に守られながら訊く。
「じゃぁ訊くけど、あんたは何の為に此処に来て、リンから金を奪って、リンの仲間を殺した」
そこで初めて、立ち上がって男を睨み付ける龍緋。濁った目で睨み付けられ、男は答えざるを得ない。
「変な男に…命令されたんだよ。この店を潰して、奪えば沢山褒美をやるって」
「へー。で、褒美なんて貰えてないからリンの仲間を殺したってわけだ。騙されたことにも気付かない———気づけないなんて、相当のバカだね、あんた。とりあえず警察行っとく?」
そう言って龍緋がリンに目で合図をした瞬間———
『ドシュッ』「…あ?う、うわああぁぁぁぁぁぁ!!?」
「アハハハハ、はんのうがにぶいんだじょ!!」
突然の風を伐る音と、真っ黒い、どす黒い色をしたマントを羽織って笑う少年と、その隣でくすくす笑う少女。その少女が、死んだおじちゃんに言う。
「よく頑張ってくれたわねぇ、わたし達の為に。御苦労様御苦労様。後はあんたを湖に沈めるだけね」
龍緋達の姿など特に目に入っていないのか、ズルズルとそのままおじちゃんを引きずっていく2人の少年少女。
「あいつら……?」
そんな様子を見ていた由芽の発言が少し裏返っていたことに気付いたのは、亜呂江だけだった。