ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真空パック ( No.38 )
- 日時: 2010/12/26 17:43
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: 気軽に呼びタメOKよ←
走ること10分くらい。未だに亜呂江は見つからない。それに、由芽ともはぐれてしまったようだ。
———まぁ、由芽の言うこと聞かずに単独行動したオレが悪いんだけど。
「やぁ------------------------------------------めぇ--------------------------------------------てぇ----------------------------------------!!」
突然。だった。
亜呂江の叫び声。
直ぐ近くにあるようで。
考えるよりも先に、龍緋は走り出していた。
由芽に最悪の結末が待っていることも知らずに。
&
「亜呂江、そこにいるのか!!?」
いつもの落ち着いた———というより冷めた声の自分が、今は凄く大声を上げていることに自分でも驚いている龍緋。
しかし、今はそんなことで関心している暇など無い。
亜呂江の声が聞こえたような気がした河川敷。1歩足を踏み入れる。
「あははは、やっときたじょ、おれの“おきゃくさん”だい2ごうが」
「———!!お前は、さっきの……!!」
真っ黒のどす黒いローブ。夜の所為もあるが、すごく真っ黒だ。顔も前髪が長く、見えない。しかし、喋り方的にも、身長的にも、声的にも子供だということは、ことだけは判明している。それ以外は知らない、解らない。
「ぼくは『ローヴェヴァールの民』の、ローヴェヴァーるじんで、ヴェアナ=イッシュっていうなまえなんだじょ!!おぼえとけ!なんだじょ」
「ローヴェ…ヴァール…?」
何かを思い出せそうだ、という顔でその名前を口に出してみる龍緋。
「おまえなにかんがえごとしてるんだじょ!おまえのかのじょがしにそうなんだじょ!」
「!!」
ハッとしたような顔つきで、真っ暗闇の河川敷を見渡す龍緋。
突然ガッと足首が捕まれる。
夏であるというのに冷たくて、氷のようなその感触に、思わずびくりと身体を震わせる龍緋だったが、それが亜呂江の手だということに気付くと、しゃがみこむ。
「……え?亜呂江、その髪……?」
一瞬フリーズする龍緋。
———闇夜の所為で、見えないだけだろう。
そう思って、否、思いこんで亜呂江を抱きかかえる。
そしてそれが今真実だと改めて解る。
「……髪、切られた…?」
あんなに長くて綺麗で、地面スレスレだった亜呂江の髪が、綺麗さっぱり無くなって———ベリーショートという髪型と化していた。