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Re: 真空パック ( No.43 )
日時: 2010/12/26 17:44
名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
参照: 熱っぽい…←



「あっははははは!!かみをきられるちょくぜんのそいつのはんのうときたら、おもしろくておもしろくてさぁ!!」
ゲラゲラと笑い転げながら、尚もはさみを亜呂江に向けるヴェアナ。
もう既にそれで傷付けられたのだろうか、亜呂江の首筋に、赤黒い汁が感じられた。
「あーもう五月蝿いあんた、ごちゃごちゃと。五月蝿いから殺す。亜呂江傷付けたから殺す」

そこで、龍緋の“何かのスイッチ”がoffモードからonモードに変化した。

「ふーん、やれるもんならやってみたらどう?今の状況的に、アナタの方が不利だけどね〜」

突然龍緋の真後ろから声が聞こえ———
「ぐあっ!!」
気付いたときには遅く、凄まじい威力の蹴りをお見舞いされる。
「ハロー、アタシのこと覚えてる?覚えてないとか言ったらぶん殴るからね」

ローヴェヴァールの民の1人。強盗事件のときに、ヴェアナと一緒にいた少女。
「アタシの名前はぁ、レーナ=リオルドっていうの!嫌いだけどね」

———確かに、ちと男っぽい名前だな。

ヴェアナと同じく真っ黒のフードを羽織っている。だが前髪はきちんと切り揃えられており、生活的にはレーナの方が上品そうだ。

「それでお兄さん、アナタは一体アタシ達にどういう殺され方したい?リクエストがあれば、今のうちに言って頂戴。即実行してあげるから」
性格は、どっちもどっち、と言ったところだが。

「うーん、あんたらだけには殺されたくないから、リクエストなんて無い。ていうか、殺されないし。ていうか、何でオレ達を殺すの。正直言うとうざい。今直ぐ消え去って。この世から」
そう言ってから龍緋は、足元にあった小石を、レーナに向かって投げつける。
当然暗闇なのだから、その小石が見える筈も無く。
『ゴンッ』「ッ!?いったいわねー、よくもアタシの綺麗な顔に傷を…!!」
それは綺麗に、華麗にレーナの左目にヒットする。

「消滅しろ」
見えない左目で睨まれる龍緋だが、当然そんなことでビビるへタレではない。そんな言葉を呟いて、何か使えるものは無いかと下を向く。
しかし、流石は河川敷。空き缶とか、お菓子の空の袋とか、そんなんしか落ちてない。

———しょうがない。
———身体で攻撃するか。

そう思い、体勢を立て直そうとする龍緋。その瞬間、いや、そのちょっと前———

「消 え 去 れ え え え え ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! !」

急に、突然。いや、亜呂江から見れば、タイミングを計っていたのかもしれない。
怒りをぶちまける、大声を出すタイミングを。

瞬間、地面が割れ、川が唸りを上げ、草木は今までに無いほどに揺れ、空気が震える。周りの山々からは、木霊さえかえってくるほどの、大声。
一言でいうならまさに———嵐。
こんなことが本当に人間の力で起きるものなのだろうか。
多分、いや絶対無理だろう。

「ヴェアナ…まさかあのコって…」
「うん、たぶんそーだろうね。“アレ”のちからを、アイツから感じるじょ…」
「ひとまず退散するわよ。





“本当の用事”はもう、済んだんだから」