ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真空パック〜参照数100突破!皆様有り難う御座います!〜 ( No.51 )
- 日時: 2010/12/23 13:45
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: ツンデレ何ソレおいしいの?←おいしいよ!!
しばらくは、その嵐は止まらなかった。
勿論、亜呂江も。
———亜呂江の暴走が止むのって、あとどんくらいだろ。
———まぁいいか、気長に待てば。
そんなことを龍緋が思っていると。
「きゅ」
そんな声がして、亜呂江がその場にドサッと倒れこむ。
「『きゅ』?」
こないだの森でみたあの狐のような声だったのに驚く。が、特に何もしない。
「ぁ…龍…?ごめん、私、ぼうそ、した」
「うん、わかってる」
「あら、しになった」
「うん、しってる」
そう言って、亜呂江を抱きかかえ(抱きかかえ方は御想像にお任せします。お姫様抱っこでもおんぶでも←)、河川敷を立ち去り、由芽の元へと向かう龍緋達。
途中人が何人か通ったが、チラ見される程度だった。
&
「おい由芽、待たせた悪い」
地面に変な体勢で寝転がり、うつ伏せになっている由芽に向かって話しかける龍緋。
しかし、眠っているのか返事が無い。
「おい由芽」
地面に亜呂江を下ろしながら、もう1度呼びかけるが、それでも返事は無い。
「無視か」そう呟いて由芽の横腹をくすぐる龍緋。
しかし、触ってから気付く。
彼女の身体がとてつもなく冷たいことに。
とてつもなく血まみれなことに。
「え?」
先程嵐で雨は降ったが、濡れたとしてもここまで冷たくなる筈が無い。
色んなものが飛ばされていたかも知れないが、それらに当たったにしては血が出過ぎだ。
「なぁ由芽。返事しろって。何かの演技か?」
龍緋には、由芽が死んでいることが解らない。彼の記憶に、『死』というキーワードもなければ、画像もないからだ。
常識的なことならば解る、覚えている筈であるのに、彼の頭にはそれの言葉が無い。
遠くから見つめる亜呂江は悟ったかのように、羽織っていたローブ———龍緋から貰ったものを上に被せていた。
「おい亜呂江、何してるんだ?何でそれを掛けるんだ?寒いからか」
いつもは冷静沈着で、亜呂江に「質問が多い」と指摘する龍緋だったが、今は2人の立場が全く逆だった。
亜呂江は龍緋を引っ張るようにして、龍緋の腕に巻かれている包帯を締め付ける。
「なぁ亜呂江?さっきからあんた様子が変だぞ、どうした?そんなに由芽をびっくりさせたいのか?」
———違う。
———由芽さんは眠ってるんじゃなくて、
「死んでるの」
「へ?」
「由芽さんは、死んでるの」
「『死ぬ』って何」
言葉を理解できない龍緋。本当に、いつもと立場が逆である。
「彼女はもう、いないの」
「何で。いるじゃん、ここに」
「それは身体なの、抜け殻なの。彼女自身はもういないの、この世に」
ますますわからない、といった様子で首を傾げる龍緋。
由芽の身体を転がして、うつ伏せだったのを仰向けにする。
とっくに息はしていなくて、心臓の音も止まっていて。
「なぁ亜呂江、『死ぬ』って何」
それがわからぬ龍緋はいつもの無表情で、無感情で訊く。
由芽を胸に、手を当てながら。