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Re: 真空パック〜参照数100突破!皆様有り難う御座います!〜 ( No.55 )
日時: 2010/12/26 10:53
名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
参照: 遅くなって御免、メリークリスマス!!!

———意志を、持たないとな。
すぅ、と軽い深呼吸をしてから覚悟を決めた勇者のように物体に近づく龍緋。
しかし彼は知らなかった。この物体が亜呂江を閉じ込めていた物体よりも、遥かに残酷なものだということを。

『プシュウゥゥ……』

自分の身体が溶けていく痛みに顔を歪ませる龍緋だが、1歩、また1歩と物体の中に入り込んでいく。

『ドシュゥ……!』「がぁっ!!?」

突然円状だった物体がハリネズミのトゲのような形に変わり、龍緋の身体を躊躇無く刺してくる。
「い、ぐぅっ……」
それでも物体の中にいる少女を助けようとするのは、亜呂江を取り返す為だろう。

『来るな!私の世界に足を踏み入れるな!お前なんかに汚されてたまるか!』

突然物体の中にいる少女が目を覚まし、龍緋に向かってそう叫んできた。
龍緋の身体の半分は物体の中に入る為に溶けて無くなっており、後の半分は物体のトゲに刺され、血まみれだった。
そして、少女の叫びでもっともっと鋭くなったトゲに刺されながら
「あんたがどれだけトゲを鋭くしたって俺は助けるよ。勿論亜呂江を取り戻す為に」
そう言った。

『ねぇ、風倉 亜呂江ちゃん。もしもあの「    」の所為で龍緋君が死んじゃったらどうする?』

そんな龍緋が必死に頑張っている横で、碑稲城が亜呂江に声を掛けた。

「死なない。龍は、死なない。だって私が助けるから」
碑稲城には見向きもせず答える亜呂江。

『無理ですよ、貴方は動けないに等しいです。私が押さえていますから』
そう言って亜呂江を押さえる力を少し強くする碑稲城の付き人。

『ぁーいや、もういいよ。彼女を放してやっても。どうせ動けないだろうからね』
眼鏡を掛け直し、ぼさぼさの髪をゴミ箱のような机の上にある髪紐で結びながら言う碑稲城。
『で、自己紹介が遅れてたんだけど、僕の名前は碑稲城 因幡。で、こっちが———』
碑稲城が紹介しようと彼の付き人に指を差すが、

『バキ』「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁああぁぁ!?何で!?何で僕指折られなくちゃいけないの、ねぇ!!」
『私の名前はリアルと申します。碑稲城博士の付き人です、宜しくお願いしますね』

リアルは碑稲城の人差し指を普通曲がらない方向に曲げへし折り、そしてその叫びを無視して自己紹介をする。


「ってあんたら俺の苦労無視して楽しそうな会話してんじゃねえよ。別に楽しそうだから俺も喋りたいとは思ってないけど」
『あっはー、やだな龍緋君。羨ましいなら正直に言えばいいじゃないかいたたたたたた、アレ亜呂江ちゃん、どうして僕に逆膝かっくんをしてるんだい?折れる折れる折れる折れ———』

『碑稲城博士戦闘不能。速やかに棺桶へ御運びさせて頂きます』
『ちょ、リアル僕まだ死んでな』『亜呂江様、そちらにあるサバイバルナイフを取って頂けると嬉しいです』
『リアル!?何処でそんなものをぎゃあああぁぁぁぁぁ』


『嗚呼うざったいな!!!
おい須野江 龍緋とやら、早く中へ入って来い』
「いや、あんたがトゲを出してる以上行きたくても行けないんだが」
『そうだった。すまないな。
ほいっと』

その「ほいっと」という可愛らしい声に合わせ、トゲが見る見るうちに無くなっていき———

『ブシュウウゥゥゥ』「ッあ!!?」『溶ける時の痛みは慣れないと無理だ。少しの辛抱だから頑張ってくれ』

龍緋の身体が溶け、激しい痛みに襲われる。
そして物体の中では少女が両腕を広げ、龍緋を待っていた。

「あ、入れた」

裸で。

「まず訊いていいか。服は?」「見るな変態!」「見せるな変態」「うっさい変態ロリコン厨ニ病!!」

ぐさりぐさり。
何かが龍緋の心に刺さる。特に最後と最後から2番目が。

『まぁいい。とりあえず早く私の周りに張り付いている結界を割ってくれ。鬱陶しくて洒落にならない。それに服も着れないしな』

『ガシャン!!』「はい服」

少女のそんな発言を聞くなり龍緋は彼女にまとわりつく結界を割り、自分の着ていたパーカーを渡す。
「結構大きいサイズだから、隠れるだろ、色々と」
『見るな死ね』
「龍、早くこっち来て。1秒でも長く龍がそいつのところになんていたら、おかしくなっちゃうから」