ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 真空パック〜参照200突破とかマジありえんしー←〜 ( No.98 )
- 日時: 2010/12/31 18:48
- 名前: ポアロン (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: 皆様良いお年を!!
届きそうで、届かない。
此処にいるのに、此処にいない。
———オレは誰?
振り出しに戻ったようで、戻らない。
戻れない。
『龍緋』
———懐かしい声。
———でも思出せない。
———誰、だっけ…。
『おい龍緋。お前何か血だらけだぞ?大丈夫なのか?』
———懐かしい。
———もっとこっちに来て。
———オレの名前を呼んで。
『おい龍緋。龍緋ってばおい。
……きっさま起きろやあああぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!』
「ッ!!?」
『お前俺が名前を連呼してるっつーのに何で起きないんだよこら』
茶髪のボブヘア、薄緑色の瞳。そしてチビ。
「ゆ……め…??」
隣で自分を支える人物の、死んだ筈の彼女の名前を呼ぶ。
「ゆめゆめゆめゆめゆ『俺は由芽だからそんなに名前連呼するな』「返事しなかったし」
頬をふくらませながら言う龍緋の頭を、わしゃわしゃと撫でくり回す由芽。
「で、何で由芽此処にいんの」
『あー…わからん☆』
———やっぱりうざい。
『まぁ何故俺が此処にいるのかは良く知らんがお前がいるのは……生死の境を彷徨ってるってとこなんじゃ
ないのか☆』
———殴りてぇぇぇぇ。
「って、え? 生死?」
———怖い怖い。オレ20歳にもなってないのに御遺体になるとか嫌なんだけど。
「にしても、生死ねぇ。オレ死ぬようなことしたっけ?」
ちょい待て主人公。忘れたのか?
『お前が知らんことは俺も知らん』
「いや一応覚えてるけど、思い出したくないっていうか、まあトラウマというか……?」
『お前のトラウマって何があるんだ?
あ、まさか何か思い出したのか!?』
「うん。
多分さっきまで小さい頃の記憶見てたんだと思う。それで色々思い出して」
記憶、記憶。
過去の記憶。
思い出したくない、思い出せない記憶。
『“真空パック”』
「は?」
突然由芽が変な言葉を口にした。
『それはな、とある科学者が研究し生み出した、言わば保管道具のことだ』
「それとオレの記憶と何が関係ある」
『まあ黙って聞け。
それには不思議な力が詰まっていてな』
特殊能力みたいなののことでしょうか由芽さん。
『ある日、1人の女が研究員にこう尋ねた。
【“真空パック”にこの子を入れて、保管しておいてもらえませんか】と。
研究員はこう答えた。
【良いでしょう、しかし条件があります。
彼女が今のまま、無事に帰ってくる保証はありません。“何か”と入れ替わりが起きる可能性があります】
それでも女は構わないと言い張り、研究員に赤子を半ば強引に押し付け、吹雪の中帰って行った。
研究員は赤子を“真空パック”の中に入れた。
するとどうだろう、最初は丸い球体だった真っ白い物体が見る見るうちに四角く硬くなってゆき———最終的には
中身の見えぬ長方形の物体になっていた』
「それが亜呂江やらの閉じ込められてた物体のことか」
『“やら”ということは、他にも見たのか、閉じ込められている奴を?』
その質問をされ苦虫を潰したかのような顔をする龍緋。
『言えないならば言わなくて良い。貴様のトラウマというのが、それかもしれんしな』
ふわりと笑って
『という話を聞いたことがあるのを思い出してな。なんとか龍緋に伝えたかったんだ』
「だから今此処に来れたってわけ?」
『ああ、きっと愛の力だな☆』
「クサイセリフ吐くな」
———きもいわ。
『んじゃ龍緋。俺はもう限界みたいだからさ、逝くよ、いさぎよく』
「あーうん。じゃあな」
『本当の最後の別れを“じゃあな”で終わらせるなこのバカ!!』
「ハイハイ。
んで何がお望みですか、お嬢サマ」
そこからそんなタラシ発言がほいほい出てくるんだ、というツッコミは無しで。
『じゃあ最後にさ、抱き締めてくれ、俺を』
「ん」
言われた瞬間躊躇うこと無くぐいっと由芽を引き寄せ抱き締める龍緋。
それから耳元で
「今までごめんな。それと———
ありがとう、由芽。
愛してるよ、なんて言ってやらないけど」