ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 妖怪大戦争っ!(参照200突破!) ( No.81 )
- 日時: 2010/12/02 22:09
- 名前: 鏖殺 ◆iOXuMLRneg (ID: BcdVt4VG)
3-7「雪上梓亜の幸福」
「メフィストフェレス様」
と、普段なら聞く事の出来ないリリアーヌ様の慈愛に満ちたお声。
メフィストフェレス様は軽く笑って、自分の膝の上にリリアーヌを座らせ、後ろから腰に手を回す。
「───貴様は苦しんでいたのか?」
と、次は少し困ったような、少し泣きそうなお声。
「えっ───」
想像していなかった言葉に戸惑い、情けない声が出る。
どうせ“即刻打ち首にせよ”等、冷たい言葉が降ってくるものだと勝手に確信していた。
「妾は感情を知らぬ───。何が悲しみで喜びかも解らぬ」
メフィストフェレス様の首元に頭を擦りつける様子は甘える子猫のようで少し笑える。
だが今は笑う余裕などなく、無表情でリリアーヌ様の話を聞く。
「───妾は、悲しいなら悲しいとはっきり言ってもらわなければ解らぬ───」
と、少し口元をとがらせ、拗ねた子供のような表情のリリアーヌ様のギャップに戸惑う。
リリアーヌ様のギャップに戸惑う事が多くも、跪いて下を向き、無言で話を聞く。
ああ、私は何て勘違いをしていたのでしょう。心を隠して貴方に近づき、貴方の命令を全て聞けば……。
貴方の信頼を得られると思っていた。貴方に気に入られると思っていた。
でも、貴方は本当の思いを告げて欲しかった───。私はなんて愚かなのだろう。
主の想いに気づく事ができぬ出来損ない───。
涙なんてもの、とっくに忘れたものだと思っていたが、目頭が熱くなる。
「もう一度問う。梓亜───。貴様は妾に仕えてきて苦しいと思った事があるか?」
その表情は、いつもの尊大かつ少し残酷な微笑。
「いえ、一度も御座いません。リリアーヌ様」
そう言って上げた顔は、涙で濡れていた。嬉しかったのか、何故流れた涙かは解らない。
私があの迫害されていた時から、本当の思いを告げていれば皆は救われたのかもしれない。
過去の事を後悔しても何も変わらない。だからこそ今の貴方様に誠心誠意お仕えしましょう。
私は最高の主に恵まれました。リリアーヌ様。