ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 薄色の空と桜吹雪 ( No.1 )
日時: 2010/11/28 17:26
名前: 梓桜 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)


肌寒い風が頬を掠め、寒さに身を縮ませた。

上を見上げると黒色の空から白色の綺麗な雪が舞い降り、モノクロの空を作り上げている。

そんな空間で僕は桜の蕾を片手に一人で歩き続けていた。

誰も居ない。ただ一人。あの時と全く同じ。



——————いや、違うか。


——————君が、居ない。



もう一度、空を見上げる。雪がしんしんと降り続けていた。

ふと顔の上に降った一粒の雪を払い、微笑んでみる。

けれど、特に何が変わるという訳でもなく時が過ぎてゆくだけだった。



——————あんなに時が経った。


——————俺は未だに消えない。


ふと持っている桜の蕾を見てみると蕾に雪がかかっていた。

先ほど自分にやったように雪を払い、元の淡い桃色の桜の蕾へと姿を戻す。

この桜の蕾が着いていた木の桜が開花するのはいつだろうか。

そしてその時も俺はまだ生き長らえているのだろう。



——————俺はいつ消えられるのか。


——————君にいつ会えるのだろう。


桜の蕾を無理やり開かせ、柔らかい花弁を一枚一枚取りながら飛ばす。

雪と共に飛んで行く桜。やがて桜吹雪となるのはいつの日か。





最後の花弁を、空に飛ばした。