ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鈍色の空と桜吹雪 オリキャラ募集してます ( No.10 )
- 日時: 2010/12/01 16:49
- 名前: 梓桜 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://言い忘れました。浅葱です。
02 青色
緊迫した空気を壊したのは、葵だった。日本刀を持ち、風のようにとにかく素早く走る。
目には先ほどの虚ろさも謎めかしさも無く、ただただ鋭い輝きのみが放たれていた。
鬼は素早く突進してきた葵に向かって金棒を振り下ろす。
振り下ろされた金棒はとてつもなく大きい。先ほどの親子であればひとたまりも無いだろう。
「……!!」
葵は頭上から下りてくる金棒を見て瞬時に横へと移動し鬼の後ろを取った。
やはり金棒は重いのであろう。振り下ろした後、鬼は唸りながら徐々に金棒を地面から上へと上げている。
しかし葵はそんな遅い動作を決してさせようとはしなかった。
敵の背後に立つ。
敵は攻撃不可能。
周りに敵は居ない。
周りには人のみだ。
剣の一発で仕留める。
可能。即、攻撃。
驚くべき速さで再度鬼へと突進して、無防備な背中を日本刀で突き刺す。
鬼の皮膚はあっさりと日本刀を貫通させて大量の血を吹き出させた。
葵の頬にも血が飛散したが葵は無表情で血を手の甲で拭い取る。
鬼は完全に——————息絶えていた。
「八千七百六十五万匹……」
そう言いながら葵は静かに目を瞑り、まるで礼儀のようにお辞儀をした。
そして顔を上げてから目を紫色から青色へと変貌させると周りの人々は葵の存在を感知する。
葵の方を見ている子供の笑い声は戦闘の終わりを告げるかのようだった。
「お前……妖怪?」
ふと安心したかと思うと後ろから声がして、葵はゆっくりながらも緊張して後ろを振り向く。
自分の背後に居たのは綺麗な銀髪を持つ少女で目の色が海のような蒼色だった。
自分と同じ……妖怪? そんな事を思いつつ葵は静かに肯定の意味で頷く。
すると少女は溜息を着きながら睫毛の長い瞼を閉じた。
「…私は百合城 彩佳……蒼い瞳だけど人間よ…」
「あぁ、ごめん。……それでどう言う用件?」
少女—百合城彩佳は微笑むこと無く淡々と自己紹介を終える。葵は微笑みながらやや緊張する。
……彩佳と言う少女が人間だとすれば、何で自分のところにやって来た?
焦った表情は見せず、微笑んだままで静かに日本刀を握る。
すると彩佳は黒い刀と白い刀を持ちながら溜息を着いた。その溜息にはどこか憂いと呆れが見える。
「貴方を殺して、何か得になる事はあるの? 言っておくけど私は霊力を持ってんの。妖怪の気配がしたから立ち寄ってみただけ」
霊力を持っている人間。現代の人間の中では希少で珍しい人間でもある。
……そう言えば彩佳にはやや人間味に欠ける所がある。葵は苦笑しつつも刀を鞘にしまう。
それを見て一応敵意が無い事を確認したのか彩佳も刀を鞘へしまった。
「それで……お前の名前は?」
無表情で、けれど何処か真剣そうに自分を見る彩佳に葵は苦笑を解きつつ、話した。
「葵。苗字は昔捨てた。……それじゃ、また会おうね」
葵は微笑んで、手を振りその場から去った。彩佳は手を振っていなかったが葵は特に気にしていない。
友達とは言い切れない不思議な関係を得たからであろうか。
