ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鈍色の空と桜吹雪 オリキャラ募集してます ( No.14 )
- 日時: 2010/12/01 20:44
- 名前: 梓桜 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://言い忘れました。浅葱です。
03 煙の残り香 前編
ひゅう、と冷たい風が吹き葵の首筋を冷やす。葵は身を縮めながら歩いていた。
行き先は特に決まっていない。妖怪の彼は特に住む場所は決めず歩いてゆく主義だから。
ちなみに行き先の決まっていない彼には何故か目標のみは自然と決まっている。
それは……“悪しき妖怪を殲滅する”事であった。悪しき妖怪とは先ほどの鬼などがそれに類する。
人々には見えず、しかし人々を嫌い殺そうとする妖怪。それが悪しき妖怪だ。
彼はその悪しき妖怪を殲滅し、人々に平和を齎す事を目標としていた。
……尤もな話、それは五百年前に言っていた事であって今現在そうなのかは不明である。
しかし当の本人の葵はそれを全く気にしていなく平然として歩みを止めていない。
「……?」
突然葵は歩みを止めたかと思えば辺りを見回しながら何かの匂いを嗅いでいた。
辺りには独特の煙の……煙草の煙の香りがしていた。恐らくそれを察知したのだろう。
そんな彼をおかしく笑うかのように二人の人影が彼の前へと現れる。
それは偶然な事に二人とも彼を知っていてまた彼も二人を知っている……簡単に言えば知り合いだった。
「久しぶりだね、と言うかそこ邪魔」
自己中心的と呼べる言動をした銀髪の少女は掛けている大きなサングラスを動かしながら笑っていた。
彼女の名は宮代麻記那。妖怪でこそあるが日本国の妖怪の葵とは違い麻記那は西洋の妖怪だ。
何でも魔人と吸血鬼の混血らしいがそこくらいまでしか葵は知らない。
ただ言える事は彼女は頭脳と怪力が素晴らしい事、そして再生能力を併せ持っている事くらいだろう。
「何だ。あの時とあまり面が変わらんな、葵?」
そう言いながら匂いの正体の煙草を吸っていた女性はリリアーヌ。魔法を扱う妖怪だ。
美しいオレンジ色に近い金髪と青い瞳を併せ持つリリアーヌだが、綺麗と言われると激怒する。らしい。
また彼女は不死身でもあり、実は実年齢は四桁を誇る葵よりも(麻記那も年上だが)年上だ。
だが彼女も葵も……いや、妖怪の間ではあまり年齢の事は気にしていないようだった。
「……二人ともやっぱ変わってないね」
葵はそう言いながら二人に微笑みかける。リリアーヌは面白い、と言う風に笑いながら煙草を吸った。
煙の独特の匂いに顔をしかめつつも麻記那も同意、と言う風に頷く。
葵を和風と言うならば洋風と言う感じのこの二人は共に行動する事が意外と多い。
前も二人で行動していたらしく、葵はそれを思い出しながら微笑んでいたわけである。
「そう言えば葵は何してんの?」
麻記那の率直な問いに葵は苦笑しつつも何とか答えを探していた。
……妖怪見つけてボコボコにしてましたと言えば殴られるだろうと瞬時に察したためだ。