ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鈍色の空と桜吹雪 オリキャラ募集してます ( No.21 )
- 日時: 2010/12/02 06:59
- 名前: 梓桜 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://言い忘れました。浅葱です。
04 煙の残り香 中編
「今までの目標通り動いてますってところかな……それで、そっちは?」
“悪しき妖怪をボコボコにしている”と言う文面は抜いて当たり障りの無い風に葵は答えた。
リリアーヌ達は特にその答えを気にせず、その場にあった木を指差す。
その木は居たって普通の広葉樹で、此処に前に見たような綺麗な桜の花を咲かせている。
葵はその木を見た後にリリアーヌ達を訝しげな表情で見た。
……それで、どうしたんですか? と言う言葉を見事に語っているような表情だった。
リリアーヌはおかしそうに口角を吊り上げて笑った後、唇を手で押さえながらまだ笑いつつ口を開く。
葵がそんな表情のリリアーヌを不思議に思っていると気付けば麻記那まで笑っている。
こちらも口角を吊り上げ、しかし手はさぞやおかしそうに腹を押さえていた。
「後ろ」
そう言って葵の後ろを指差す。何かと思いまた訝しげに思い後ろを振り向くと葵は驚きのあまりビクッと体を震わせた。
何と自分の後ろに中学生くらいの見た目をした少女が立ってたからである。
少女の容姿は背中を覆う程の長い黒髪に、黒目。身長は自分と比べるとかなり小柄で本当に中学生くらいだった。
葵は自分の驚き方を思い出しやや恥ずかしくなり、それを隠すように少女から目を逸らす。
少女は何故自分から目を逸らしたのか、と思い首を傾げながら葵をじっと見つめた。
そんな二人の様子にリリアーヌと麻記那は笑っていて、葵の顔はますます赤くなる。
ちなみに葵は人間と中級妖怪であれば気配を察する事は出来る。しかしこの少女の気配は全く無かった。
……じゃあ、この少女は余程強い妖怪……? そんな事を思いながら呆然とする葵に、少女はクスリと笑った。
「はじめまして、私は綾梅……いえ、璃月まほろ。……貴方は?」
「葵です。……苗字は昔に捨てました」
そう言ってまほろは手を葵の方へと伸ばしてきた。どうやら握手をするつもりらしい。
葵はそんなまほろの様子にどうやら先ほどの驚きには気付かれていなかったのだろうと思い、微笑んで握手に応じた。
握手を終えると、リリアーヌがふぅっ、と煙を吹いてから腕を組んでまだ笑いつつ説明を始めた。
「まほろは妖怪だ。霊力を持った人間共の呪いですべての記憶を持ったまま永遠に転生し続けている。それでなかなか面白い奴でな……先程まで木の上で話していたんだ」
妖怪。しかも永遠に魂を転生し続ける妖怪。葵はそれを聞くだけでまほろが上級の妖怪だと分かった。
まほろはそんなリリアーヌを見ながら苦笑して話した。
「長く生き過ぎて、死にすぎて、今はもう何もわからないのよ……」
苦笑、いや切なく哀しげに微笑んだまほろを葵は真剣に見つめ続けていた。
突然四人の空気が静かになっていまい煙草の煙の匂いと、その切ない微笑み以外には何も無くなった。