ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鈍色の空と桜吹雪 オリキャラ募集してます ( No.22 )
- 日時: 2010/12/02 21:01
- 名前: 梓桜 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://言い忘れました。浅葱です。
05 煙の残り香 後編
そんな空気を静かに壊すかのように、リリアーヌは何度目か分からない煙草を吸いつつ葵を見た。
突然見られたのでキョトンと訳の分からない、と言う風な表情をした葵にリリアーヌは苦笑しつつとりあえず何かを話してみる事にした。
「葵、そう言えば貴様……今宵の寝床は決まっているのか?」
実は今心の中に留めていた事をあっさりと指摘され葵は口をポカンと開けて視線を逸らしつつも頷く。
そんな様子の葵に再度出て来た笑いの波を堪えつつリリアーヌはある豪邸を顎で差した。
その豪邸はリリアーヌ達の居る場所からさほど遠くない洋風の豪邸だった。
近隣の一軒家が一切無く、その土地を買っているのだと一瞬で分かる。それほど家は大きかった。
先ほどまでリリアーヌ達との会話で豪邸の存在には全く注意していなかったが今考えてみるとすぐに目に付く巨大さと豪華さのある豪邸だ。
庭らしき所には紅色と白色の大きな薔薇が咲き誇っている薔薇の花園があり、近くにマーライオンのような形をした噴水もある。
「妾は昨日まで麻記那と此処を寝床にしていてな……一人が寂しいと言っておる奴だしお前はどうせ寝床が無いのだろう? 泊まって行け」
半ば命令形のような形で言われ、返事をするタイミングを見事失った葵はとりあえず頷いておいた。
一応寝床は探していたので幸いと言ったところだろう。
「あ、でも何か妖怪……確か鬼の奴も泊まってるらしいから気をつけなよ〜?」
「……それでは葵さん。また会えると良いですね」
麻記那とまほろはそれぞれの性格に合った別れの挨拶をしてからリリアーヌと共にさっさと去って行く。
すると、気付けばその場には葵が一人取り残された風にポツンと突っ立っていた。
そんな自分のやや無様に見える姿勢に笑いながらその豪邸へと向かう事にした。
妖怪が一人泊まっていると言っていたけれど多分大丈夫な事を祈りつつ。
歩いて間も無くして豪邸の前へと着いた。葵はインターフォンを押してとりあえず待つことにする。
するとすぐに扉が開き、出てきたのは葵よりいくらか身長の大きい翠色の髪の青年だった。
そして綺麗な金色の瞳で突然やって来た葵を訝しげに見つめていた。
何て言えば良いのかと表情こそ崩さなかったがやや焦る葵に、青年は無表情で話を始める。
「……お前、リリアーヌとの知り合いか?」
何故突然そんな事を……と思ったがこのまま沈黙が続くのは耐えられなかったので葵は頷いておいた。
するとそれだけで話は通じたのか青年は葵に「入れ」と促してから歩き始める。
煙草の、煙の残り香が鼻をかすめ先ほどまでの会話を思い出して、葵はふんわりと微笑んだ。