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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鈍色の空と桜吹雪 参照100突破しました ( No.27 )
- 日時: 2010/12/02 21:57
- 名前: 梓桜 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://言い忘れました。浅葱です。
08 蒼色は夢を見る
「ふぅ〜……」
葵は扉同様凝ってあった大きく広い部屋にある白いシンプルなダブルベッドに腰掛けた。
ふかふかと柔らかいベッドは今までの疲れを吸い込むかのように葵の身を優しく包む。
そして葵は溜息を着きながらベッドに寝転がって左手を顔に当てた。
表情は無表情だったがそれは何処か疲れから来るような、やや強張った無表情であった。
そしてその体制のまま葵は天井を見つめてふぅ、と溜息を吐く。
「……とんでもない寝床に来ちゃった……」
そう言って手を顔からベッドへと戻して左に寝返りを打った。
そうして動くとベッドがさらに疲れを吸い取るような気持ちの良い感触がする。
葵は無表情を崩して微笑みながら小さな笑い声を漏らす。
……その笑いが嬉しさから来ているのか皮肉からきているのかは実に微妙な物だったが。
そして葵は目を閉じると笑うのを止めて、静かに瞼を閉じた。
(……俺は、絶対に忘れない。あの日を、あの時を、あの痛みを……そして貴女を)
ベッドのシーツを握り締め、薄く目を開けながら心の中で呟く。
声に出せば何かの宣言になりそうな……とにかく偉大な心の声だった。
しかし当の本人はそう言う事は全く思っていないらしく先ほどより強くシーツを握りながら唇を噛み締めた。
(此処では桜は見えないけれど……いつかは、きっと、貴女と共に……)
葵はそう心の中で呟いたかと思うとまた静かに瞼を閉じて静かに眠りへと落ちた。
しかしそれでも尚強く握られているシーツは彼の密かな決心の強さを表しているように見える。
そしてこれからの彼の人生にも
必死で耐えようと言う決意の現われにも見えた——————……。
鈍色の空と桜吹雪 終
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