ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【無題】 ( No.2 )
- 日時: 2010/11/30 19:35
- 名前: 祐 ◆LHzy2D8eSo (ID: NWU2GU14)
—1.日常の生活の終わり—
「翔也!来てみろって!!」
教室の一番隅の席に座って、外を眺めていた翔也は声のもとへ顔を向ける。
そこへ、一直線にボールが飛んでくる。
翔也は顔の前でボールをキャッチ。
いつものことだ。
こうやって、昼休みになると親友たちがボールを投げて遊びに誘う。
「また、弱い球かよ。そんなんじゃ、プロになれないぜ」
翔也は、ボールの持ち主へボールを投げながら言う。
うまくいけば、ここで持ち主の手へ。
が、今回はそうじゃないようで。
〝ゴッツーンッ″
教室の掃除を丁寧にやっていた、担任の頭を直撃した。
「しょ〜や〜!!」
担任が俺のほうにやってくる。
「翔也、やばいって」
クラスメートがささやくように言っている。
だが、翔也は逃げない。
担任が近づいてくるのを待つだけだ。
そして、とうとう目の前に担任が立つ。
「お前、今日という今日はゆる…」
言いながら担任は顔をあげるが、そこに翔也は居ない。
「おい、翔也は?!」
そういうと同時に担任の肩をたたく奴が一人。
「先生、俺、ここだよ?先生が俺を捕まえれるわけないじゃん」
そう、担任の後ろに翔也は居たのだ。
「お〜ま〜え〜!!」
翔也は教室を出た。
担任が追いかける。
途中で人とぶつかり、そのたびに謝る。
後ろを見ると、担任が息を切らせながら走っているのが見える。
とうとう見えなくなると、翔也はいつの間にか笑っていた。
歩きながら、屋上へと向かう。
屋上につくと、壁にもたれて座った。
「これが俺の日常だよな。変わることなんて…」
そう、これが日常だったのだ。
あの事を人に聞くまでは。
そう思うと、自然に涙が出てくる。
「くっそ。午後、サボろうかな」
そう言い、立ち上がる。
「あっ。やばい。鞄、教室に置いたまま…。まあ、良いか、帰ろう」
そう言い、屋上をあとにする。
「アイツか…。俺の人生変えたのは。じゃあ…」
翔也が、屋上をあとにすると、一人の青年が出てきた。
屋上に居たのは実際には一人ではなかった。
青年が、翔也のほかに居たのだ。
そして、その青年は翔也を見ていた。
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「ただいま」
家に帰ると、静まり返っているのが分かる。
翔也が、親にもあの事を聞いたからだ。
親が自分の過去を知らないわけがないと思っていたのにも関わらず、親の答えは違った。
『俺のこと知ってるんだろ?教えてくれよ!』
『ごめんなさい。ほんとにごめんなさい』
昨日のやり取りはこれだけだ。
それだけでも一応会話は成り立っているほうだ。
こうなったのは一週間前。
すべて、俺のせい。
どうしたら、普通に戻れるんだよ?
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朝起きて、挨拶をしても誰も返事をくれなかった。
だんだん腹ただしくなって、朝食も食べずに家を出た。
学校についても、誰もいないから、気分転換ができない。
「やる気起こらねえ…。今日一日、屋上でサボるか…。」
翔也は、誰にも見つかないように屋上へ上がる。
屋上に着いた途端、なぜか落ち着いた。
ここ一週間、何かに追われている気がしていた。
やっぱり、涙が頬をつたう。
壁に寄り添う。
寝不足のせいで、うとうとしてくる。
寝たら、人が来た時に逃げられない。
眠気覚ましに、空気を殴る。
眠気はおさまったが、いつもの感情はやまない。
「くっそ。どうしたら、この感情を前みたいに落ち着かされるんだ」
涙をぬぐい、空に向かって言う翔也。
「そんなに、前に戻りたいのか?」
いつのまにか後ろに、人がいた。
そのことに気付き、涙をこらえて後ろを振り向く。
「泣いてなんかないからな。そんなこと…」
後ろを振り向いた瞬間、翔也は息をのんだ。
翔也と同じ、普通の高校生なのに、なぜか纏っている空気が違った。
言葉が出なかった。
「普通に戻りたいんだろ?なら、俺と一緒に来い」
青年が翔也の前に手を差し出す。
翔也は一瞬ためらったが、青年の手をとった。
これが翔也の運命を大きく変えるなんて、だれも想像しなかっただろう。