ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: フランベルジェの剣 ( No.18 )
- 日時: 2010/12/12 12:39
- 名前: 雅 ◆2WetyLTYZk (ID: 7hV223vQ)
- 参照: 今回はかなり短いですorz
Ⅳ
チリ————ン…
夜の街に響き渡る鈴の音。さ迷うその音は、虚空にむなしい響きを残すだけ。だが、そんな音を聞いて、街のどこかで不意に顔を上げた者が二人ほどいた。
「………何?」
「————ん?この鈴の音は…」
一人はまだ幼く、もう一人の膝の上で眠っていたばかりだった。もう一人は忙しなく腕時計を見て、何かソワソワしている様に見えたが、彼等に特に待ち合わせの用も、これからの用事も特に無かった。
チリ—————————ン…
さっきよりも近いその鈴の音は、何かの合図を知らせている様にも見られる。
「——————」
その時、腕時計を見ていた人物は目を見開いた。何らかのショックを受けたかのように、動きまで完全に止まってしまった。それに気が付いた膝で寝ていた少年は、首を傾げて彼の顔を見る。そして、青年はゆっくり少年の顔に目線をずらし、声を震わせながらこう言った。
「あ…“あの子”が—————殺される!!」
*
“美しいものには棘がある”
その言葉を脳裏に浮かべながら、僕は血を吐いて倒れた。油断したつもりは…無かったのになぁ…と、彼は冷静に思う。目の前の彼女は笑みを絶やさないものの、何処か辛そうに僕を見ている。全く…殺すなら人思いに即死させてくれよ。まぁ…死ぬ気なんて尚更無いんだけど。
「————まだ死んでいないの?しぶといわね…」
「死ぬわけには…いかないでしょ?自分の呪いの正体さえ…まだ、知ら…な……」
———くそっ…話すのもままならないじゃないか…。そんな事を思って、僕は彼女を見る。だが、僕は彼女の顔を見て———言葉を失った。
例えるなら、怒り。
彼女は憎悪にも嫌悪にも近い何かを、僕に向け———
「…その呪いの存在が…私をどれだけ苦しめたと思っているのよ!私はその呪いの存在に怯え———それは私を狂わせる!それは消えるべきものなの!あの忌々しい‘女王’と共に、葬り去られた筈なのに…!何で…何でなのよ!?」
そして彼女は、叫んだ。
アリスを狂わせる?あの忌々しい女王?葬り去られた?…だが、その言葉を一つ一つ理解するだけの体力など、僕にはなかった。頭の中が白く、白くなっていく。そして、体力が尽きブツリと僕の意識は途絶えた。
——だが、意識を失う本の一瞬…僕は確かに“その声”を聞いた。
「————クク…相変わらず五月蠅い娘さんだ」
何故、その声だけはっきりと聞こえたか、それは…
その言葉を発したのが、紛れもない自分だったっから。